学部生そして大学院生の皆さん、ご卒業・修了おめでとうございます。
令和6年度は、工学部、建築学部、ライフデザイン学部の卒業生716名、大学院工学研究科およびライフデザイン学研究科の博士前期課程を修了する大学院生42名、博士後期課程を修了する大学院生1名、総計は758名です。誠におめでとうございます。
またご家族など関係の皆さま、今日の佳き日をお迎えになられましたことを、心よりお祝い申し上げます。皆さまを会場にお迎えして学位授与式を挙行出来ますことを、大変嬉しく思います。
思えば学部卒業生の多くの皆さんは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大最初期2020年度を高校3年生として過ごされ、2021年度に本学に入学されました。その入学式にて私は、「新型コロナウイルス感染症により否応なく迫られた「教育のデジタル化」ではありますが、変化を一種のチャンスと捉え、「できない」ことに囚われるのではなく、「できること」に、そして「より良くできること」に意識を向けましょう。」と皆さんにご挨拶しました。その後の大学生活はいかがだったでしょうか。
当時のオンライン授業は、教室での対面授業に戻っても、その教室での授業録画が通常のこととなり、皆さんの日常の復習に活用されるようになりました。2021年4月に、皆さん新入生と在学生を歓迎するCAMPUS OPEN DAYも、その後毎年の恒例行事になりました。オンライン講義に関する率直な意見を学生から聞くために開催した懇談会も、いまや講義だけでなく、大学運営に関しても意見を頂戴する学生FSD研修会として定例化しました。つまり、コロナ禍という困難にまずは対処しながらも、それを冷静に振り返りながら取り組みを改善し、より良い取り組みとして定着させるという、学修システムの再構築を私たち学生・教職員は共に成し遂げたのです。
このような、見えない答えを探して試行錯誤しながら自己点検評価し、最適解をカタチにしていくような物事の取り組み方は、現代では標準的な手法ではありますが、既存の組織、特に大学という一種保守的な組織で、かつコロナ禍という未曽有の状況下で変革を成し遂げたことは極めて特筆すべき成果であり、私たちはこれを誇ってよいことと考えています。この取り組みは、本学のブランドスローガン「未来のエスキースを描く。」をまさに具現化したものと言えるでしょう。エスキースとは、構想を素描するという意味がありますが、本学では、失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢を大切にし、そして本学のオープンな雰囲気をも、エスキースという言葉に込めています。
皆さんは、本学で培った専門知識とスキルをこれから社会で活かすことになります。もちろん、まずは実社会で仕事を覚えることが最優先課題となるでしょう。しかし皆さんがいずれ、自らのそして社会の未来を構想・構築し、担っていくのです。未来のエスキースを描くことは本学を卒業・修了した後にこそ、必要なことなのです。
東北工業大学は、建学の精神を「わが国、特に東北地方の産業界で指導的役割を担う高度の技術者を養成する」と定めています。創立以来、60年の歴史を有し、約4万人もの卒業生を輩出しています。卒業生・修了生の各地・各分野での活躍と社会貢献が、社会より極めて高く評価されていることを、皆さんもご承知のことと思います。その評価は、本学での学びを基盤として、先輩方の弛まぬご努力が継続されての結果であります。本日卒業・修了される皆さんも、東北工業大学で学び、築き上げたことを誇りにし、社会からの信頼を継承し、より良き社会を築く一員になられることを期待します。
以上、皆さんの卒業・修了にあたっての、学長挨拶とします。
令和7年3月19日
東北工業大学 学長 渡邉 浩文