工学部・建築学部・ライフデザイン学部そして大学院に入学の皆さん、ご入学おめでとうございます。またご家族など関係の皆さま、今日の佳き日をお迎えになられましたことを、心よりお祝い申し上げます。
2025年度の入学生は、学部学生805名、大学院博士前期課程57名、博士後期課程5名、新入生の総計は867名です。皆さんと共に、これから新しく学修と研究を始められることを、教職員一同とても嬉しく思います。
東北工業大学は、建学の精神を「わが国、特に東北地方の産業界で指導的役割を担う高度の技術者を養成する」と定めています。創立60周年を昨年度に迎え、約4万人もの卒業生・修了生を輩出しています。卒業生の各地・各分野での活躍は社会より極めて高く評価され、その高評価が、企業からの更なる求人を促すという好循環が形成されています。新入生諸君も本学にてしっかりと学修し、そしてクラブ・サークル活動等も通じて多くの学友を得て、わが国、特に東北地方の未来を担う実力ある人材に成長していただきたいと思います。
特に工学部そしてライフデザイン学部に入学された皆さんは、それぞれ新しい学修プログラムに積極的に取り組んでいただきたいと希望します。工学部が学科制から課程制に移行したこと、ライフデザイン学部にて経営デザイン学科に名称変更したことを、皆さんご存じと思います。これらの変更は、形式的な見かけ上の変更ではありません。それぞれ学部共通の専門科目群を開設し、工学部生・ライフデザイン学部生としての基盤を整えていただきます。そして工学部では所属課程での学びに加えて分野横断プログラムに、ライフデザイン学部では所属学科での学びに加えて副専攻プログラムに取り組めるように致しました。すなわち共通基盤を整えた上で「専門+α」の学びを可能にする学修プログラムを用意したわけです。
かねてよりわが国は科学技術で立国していますが、現代ではデジタル・AIやグリーンテクノロジーに注力してSciety5.0 for SDGsの実現に向かっています。そこで肝要となるのは、要素技術の開発・進化のみならず、様々な要素技術を組み合わせ、システム・仕組みとして様々な分野に展開・定着していくことです。そのようなこれからの社会で求められる人材とは、特定の専門分野に長けた高度技術者のみならず、科学技術と社会に対して俯瞰的視野を持つ技術者・経営者となります。
本学は、建学の精神に明示するとおり指導的役割を担う高度の技術者を養成する大学ですので、堅実で高度な専門教育を従前から担ってきましたが、これに加えられた分野横断プログラムと副専攻プログラムこそが、科学技術と社会に対して俯瞰的視野を持つ技術者・経営者の養成のための教育プログラムなのです。この俯瞰的視野の涵養という点では、建築学部を含む全学部学生必修の教養教育科目として、1年生前期の「人工知能総論」、後期の「グリーンテクノロジー」を既に開設しています。これらの科目に連続する選択科目も多数開講されていますので、これらを通じて学びを深めていただくとともに、所属する学科での専門の学びをデジタル・グリーンに拡げそしてつないで、科学技術と社会をさらに発展させてください。ひろく学び、知をつなぐ場を提供することが、本学の提供する重要な価値であると考えています。大学は新たな学びの器を用意しましたので、それを皆さんに活かしていただきたいのです。
この様に、皆さんが目指すべき成長は、知識獲得型のいわゆるお勉強には留まりません。専門的知識や技能の獲得を大前提とした上で、プラスαの力、すなわち俯瞰的視野・能力や、社会にて必要不可欠なリーダーシップをも、獲得する必要があります。クラブ・サークル活動やボランティア活動などの正課外活動に取り組むことも、リーダーシップなど皆さんの人間的成長を促すうえで極めて有効でありますし、本学は正課外活動も重要視しています。皆さん一人ひとりの、挑戦し続ける意欲と努力こそが、本学での成長の鍵なのです。
本学はブランドスローガン「未来のエスキースを描く。」を制定しています。「エスキース」とは素描、素案等を意味するフランス語で、特にデザインや建築の分野では学生でも日常的に使用する言葉です。試行錯誤しながらもモノやカタチを探って構想していくプロセスそのものを意味する言葉でもあります。多様な価値観が存在し、正解が一つではない社会で、真面目に誠実に、未来のより良い暮らしの在り方を問い、既成概念にとらわれない自由な発想と、垣根を超えたつながりのなかで、失敗を恐れずにカタチにしてみること、カタチにしていくという想いを、新たなスローガンに表しています。「見えない答えを自らの頭と手と、場合によっては足も使って探し続ける」ことに、東北工業大学の学生・教職員は一丸となって取り組むという社会に向けた決意の表れでもあります。
東北工業大学は建学の精神に基づき、高度な教育・研究を極めて誠実にかつアクティブに行います。今日からは、皆さんも東北工業大学の一員です。皆さん、積極果敢な本学の雰囲気を是非楽しんで、また自ら進んで取り組んでいただき、共にそれぞれの、未来のエスキースを描いていきましょう。
以上を、入学式の式辞とします。
令和7年4月4日
東北工業大学 学長 渡邉 浩文