工学部 環境応用化学科
佐野 哲也 研究室
森林バイオマス利用推進が
生態系へ及ぼす影響の評価
再生可能エネルギーへの期待の高まりから国内でも多くのバイオマス発電所が稼働するようになりました。しかし、燃料となる木材と森林は有限であり利活用の推進は持続可能な形で行っていくことが求められています。育林・伐採、木質資材の生産・加工、使用済み木材のエネルギー利用、燃え殻の林地還元というリサイクルを森林生態系の機能を阻害することなく回していくためにはどのようにすればよいのか、植物や土壌など森林環境への影響を評価研究しています。
学位
博士(環境学) 東京大学2008年
略歴
2008年12月 - 2013年3月 | 森林総合研究所 特別研究員(PD研究員) |
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2013年4月 - 現在 | 東北工業大学 工学部 准教授 |
研究分野
森林生態学(植物・土壌)、木質バイオマスのエネルギー利用
担当科目
- 環境問題とエコロジー
- 地球環境科学基礎
- 土壌環境工学
- 緑地環境工学
- 資源循環とライフサイクルアセスメント
研究室所属学生の卒業研修(論文/設計/制作)
- 緩効化処理を施した木質燃焼灰散布後のスギ植林地の土壌化学性の変化について
- 広葉樹が植栽された防災盛土「千年希望の丘」の土壌化学性の変化について
- 地域産業連関表の推計による宮城県登米市森林セクターの産業連関分析
研究テーマ
木質燃焼灰の還元が林地の炭素貯留量に与える影響の評価
バイオマス発電所等施設から排出される木質燃焼灰を林地還元するという取り組みが生態系に与える影響を評価します。樹木の成長や土壌化学性に与える影響を評価しています。近年は、パリ協定に関連する二酸化炭素吸収源という土壌の炭素貯留量に与える影響を重点的に調べています。燃焼灰を散布した土壌だけでなく、蛇紋岩地の森林土壌などアルカリ性に傾いた林地土壌についても同様の評価研究を進めています。
地域産業連関表の推計・分析に基づいた林業振興策の環境保全・経済効果の評価
林産業の振興が環境負荷量に与える影響を評価することを目的に、産業相互や産業と環境の関係をとらえようとする産業エコロジー(Industrial Ecology)という工学・環境学から派生した分野の視点をとりいれ、震災の影響を受けた阿武隈や北上山地の林産業を主要産業の1つとする自治体を対象に研究を行っています。産業連関表は、産業間の取引額を行列形式にまとめた経済統計表ですが、各産業で推計された環境負荷量と関連付けることで、経済波及効果だけでなく環境負荷の増減を評価するツールになります。対象自治体の地域産業連関表を推計し分析することにより、林業振興に関する政策が低炭素社会や循環型社会の実現にどれほど貢献するのか定量的に評価できるようにすることを目標に取り組んでいます。
盛土上に造成された海岸防災林の生態学的モニタリング
仙台湾をはじめとする津波被災地では、津波の被害を受けた海岸林の再生事業が行われています。高い地下水位の影響で樹木の根張りが浅かったことが、被害拡大につながったという見解から盛土でかさ上げをした場所に植栽が施されています。本研究室では岩沼市の千年希望の丘や仙台市荒浜区国有林の広葉樹植栽地で、樹木の成長、土壌の化学性、生物多様性のモニタリングを継続して実施しています。