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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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チェコ通信 Vol.6

Extra.06 小出 英夫(都市マネジメント学科)

前回、Brnoでの初雪をお伝え致しましたが、それ以降、数回夜中に降雪があったものの、朝には雪がほとんど消えている状況でした。が、一昨日は夕方から雪が降りはじめ、昨日は日中でも屋根や木の上に雪が残っていました。それでも、積雪僅か2、3cmで、昔に比べ降雪量は大きく減少しているとのことです。ただ、日中の平均気温は0℃前後、私にとっては更に厳しい状況になって来ました。

ところで、2016年も終わりに近づき、クリスマス(Vánoce バーノツェ)シーズンです。

 

写真1 Brno工科大学土木工学部の正面玄関前のクリスマスツリー

 

写真2 Brno旧市街地の玄関口「チェスカ」の風景

 

チェコ共和国は、国民の半分以上が現在では無宗教とも言われていますが、歴史的背景からもクリスマスは国民的行事で、12月24日から26日の3日間は祝日です。また、ドイツなどと同様、11月末から、クリスマスマーケットが市内中心部の各広場で連日開催され、皆、寒さに耐えながら、ホットワイン(Svařák スヴァジャーク)や、チェコ周辺独自のはちみつ酒(Medovinaメドヴィーナ)を飲みながら楽しんでいます。

 

写真3 Brno旧市街地内のクリスマスマーケット(ホットワインのお店など)

 

写真4 旧市街地の「自由広場」のクリスマスマーケットの様子

 

写真5 旧市街地の「緑の広場」の様子(皆が手にしているのがSvařákやMedovina)

 

大きなクリスマスマーケット会場にはステージも設置され、老若男女が楽しめる様々なイベントが行われています。この点は、賑やかながらも質素なドイツの伝統的なクリスマスマーケットよりも、日本で開催されているイベント行事的なクリスマスマーケットに近い雰囲気かもしれません。Vol.4の狂言の話題の際にも少し触れましたが、チェコ人が日本人と気質がとても似ていることが理由かもしれません。なお、話のついでですが、チェコでは自宅内や、チェコ人が主に利用するホテルの客室内は基本、土足厳禁です。日本のように明確な境界がありませんが、皆、靴を脱いで玄関脇等に置きます。理由は、「室内が汚れるから」とのことでした。この点もやはり日本ととても良く似ています。

 

チュコ国内ではこのような位置づけのクリスマスですので、当然、大学内でも各種関連行事がありました。学科では年度末に当たる12月の学科会議終了後、引き続きクリスマスパーティーが開催されました。当日は、たまたま、チェコの有名ビール「ピルスナー・ウルケル」が日本企業に買収されるニュースがあり、当日も会場に準備されていたため、学科長のNovák教授の挨拶もその話題から始まり、いい意味で盛り上がりました。

 

写真6 私の所属する構造力学学科のクリスマスパーティー(教職員・ドクター生が参加)

 

土木工学部主催のクリスマスコンサートも学部内のホール(写真1の中央2階部分)で開催され、久しぶりに私もスーツとネクタイを着用しました。

 

写真7 土木工学部主催のクリスマスコンサート(学部内ホール)

 

ところで、前号(Vol.5)にてコンクリートの燃焼実験の様子をお伝え致しましたが、その実験結果の速報的な内容が、先日、Brnoの南方、オーストリアとの国境に近い南モラビアの街Kobylíで開催された学会で発表され、私も実験のお手伝いをさせていただいた経緯から、オーサーの1名に入れていただきました。この場をお借りして、ご指導いただいたProf. Zbyněk Keršner 先生にお礼を申し上げたいと思います。

 

写真8 「コンクリート構造物の持続的発展」に関する学会の様子

 

図1 「コンクリート床版の燃焼試験」についてのプレゼンスタート(右上のワニの絵は学科のロゴマークで、Brnoの象徴であるワニがコンクリート梁に載っているデザイン)

 

図2 プレゼンの最後の画面 (ご厚意で写真でも私を紹介していただきました)

 

あっという間に滞在が7カ月を過ぎ、このチェコ通信も帰国直前発信予定の次回Vol.7を残すのみになってしまいました。

 

Brnoに来ることが決まった時、この機会に是非訪ねたいと決めていた場所がありました。それは隣国、ポーランドのクラクフ近郊の通称「アウシュヴィッツ」、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所です。

負の世界遺産として、この名前を知らない人はいないと思います。しかしながら、戦争体験無し、大きな人種差別等の人権被害を受けた経験も無い私にとって、そこで起きていたことについて、現場に行かなければ理解し得ないこともあるのではないかと思ったからでした。当時でも先進国であったドイツ、当然、多くの優秀な技術者も「アウシュヴィッツ」でのできごとには関わっていたはずです。これらのことも含め、「アウシュヴィッツ」唯一人の日本人ガイドの中谷剛さんにご案内・ご説明いただき、この滞在期間中に訪ねる機会を得ることができました。

「技術者倫理」の重要性に関しては、「スペースシャトルの爆発事故」が話の出発点として一般に良く出てきますが、歴史・政治的背景等が大きく異なるものの、「アウシュヴィッツ」内でのできごとと「技術者」との関係も、「技術者倫理」を語る上で重要な事柄であることをあらためて感じ、Brnoに戻りました。

 

写真9 ドイツ規格で整然と区画整理された収容施設(アウシュヴィッツ収容所)

 

写真10 ガス室前まで敷設された線路(ビルケナウ収容所)

 

写真11 収容施設内の石鹸置き付きの手洗い場(ドイツ規格で設計・発注・納品・設置されたものの、実際にはここに石鹸が置かれることは無かった ビルケナウ収容所)

 

では。 次回はついに「チェコ通信」の最終回となります。

 

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小出 英夫 教授

研究分野:廃棄物のコンクリート材料への適用に関する研究

廃コンクリートの再利用で省資源の都市整備へ
都市の構築に不可欠な材料に関する実験をしています。役目が終わったコンクリート構造物や、コンクリート塊を新たな材料として再利用する実験など、省資源・省エネルギーなどに関わる研究を行っています。

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