東北工業大学

工学部

電気電子工学科

田倉 哲也准教授

Takura Tetsuya

PROFILE

2004年3月に東北大学工学部を卒業後、同大大学院工学研究科前期課程、後期課程へ進学。日本学術振興会(JSPS)の特別研究員として研究に携わりながら、2009年に東北大学で博士(工学)の学位を取得。同年4月より同大大学院工学研究科の助教に就任する。2014年4月に本学工学部の講師に着任し、2020年4月に准教授となり現在に至る。

担当科目
電気電子工学実験Ⅰ
ディジタル回路
パワーエレクトロニクス
研究室・教員紹介

※役職・担当科目および研究内容は取材当時のものです。

THEME電力エネルギーの未来を変革する
ワイヤレス給電のポテンシャル

THEME電力エネルギーの
未来を変革する
ワイヤレス給電の
ポテンシャル

ケーブルを使わずに給電できるスマートフォン用充電器などの先端機器が次々と登場し、ワイヤレスでエネルギーを送ることが身近なことになってきています。田倉先生は学生時代、この技術を医療分野でも役立てようとする最前線に立ち会ったことで開眼。現在、ワイヤレス給電用コイルと共振回路の設計や、ワイヤレス給電に適した磁性材料の利用方法に関する研究、ハイパーサーミアに関する研究に取り組むなど、可能性の幅をより広げるため模索し続けています。

離れた場所からエネルギーを伝える多彩な用途が見込まれる先端技術

どんな研究に着手していますか。

この研究室では、電磁誘導によるコイル間の磁気的結合を用いて、離れたところへエネルギーを送る技術に関する研究に取り組んでいます。電磁誘導は物理現象の一つとして古くから知られており、身近なところでは、電柱の上に設置されている変圧器(トランス)にも活かされています。私たちは、その電磁誘導をワイヤレスエネルギー伝送の軸に据え、性能を左右するコイルとそれを支える材料や回路の解明などに挑んでいます。今後、より広い分野での活用が期待されている技術だと言えるでしょう。

がん治療にも役立っていると聞きました。

がん組織を温めることでダメージを与えるハイパーサーミアと呼ばれるがん治療法があります。患部を温める方法はいろいろありますが、私たちが取り組むハイパーサーミアの方法は、電磁誘導を応用し体外から送ったエネルギーを体の中に埋め込んだデバイスで受け取って熱を生み出す仕組みになっています。このように医工学分野においても、進歩目覚ましい技術です。

研究成果がもたらす新たな未来と不可視の磁界を思考で捉える面白さ

この分野に進むきっかけは何ですか。

私が大学4年生の時に配属された研究室では、体の中にある人工心臓にエネルギーを送る経皮的エネルギー伝送システムについて研究が行われていました。この技術を使うと、機器を体内に埋め込む手術さえ済めば、体に穴を開けて線を繋がなくてもエネルギーを容易に供給することができます。そのため、身体への負担が軽減され、患者のQOL(生活の質)が飛躍的に向上するということが分かり、大きな衝撃を受けました。昔から知られている電磁誘導の技術で、このような先進的なアプローチが可能になるのだと初めて知った時は、まるで魔法のような感覚でした。これが、この分野への興味がより高まる最初のきっかけになりました。

田倉先生が目指す研究の方向性とは。

この分野ではEVやドローンなどの移動体にワイヤレスで給電する技術開発の発展が目覚ましいですが、私としては、コイルを使ってエネルギーを伝送する原理的な部分で、より考察を深めていければと考えています。例えば、コイルの性能を高めるための磁性材料の検討や、コイル形状の違いによって及ぼす影響など、まだまだ研究すべき余地があるのではないかと思っています。特にコイルの形状に関しては、スパイラル型、ソレノイド型、8の字型など、様々な形が提案されており、研究者たちが目には見えない磁界を捉え、形にした素晴らしい知恵の結晶だと言えるでしょう。もはやこれ以上に奇抜な形状のコイルが世に現れることはなかなか無いと思いますが、もし発明することができれば、未来を変えるような技術のブレイクスルーが起こるのではないかと期待しています。

研究に取り組むやりがいとは。

目には見えない磁界というものを頭の中でイメージしながら、コイルの形状特性を活かした使い方や組み合わせを考え、適した回路の設計や磁性材料の選定、性能を十分に発揮できる領域のデザインなどをすべて一緒に考えなければいけない難しさがあります。そして、そこに挑むべき大きなやりがいも感じています。

興味と発想の幅を広げて真の学びに歩み出す出発点に

学生に求めるものは何ですか。

ある一分野の知識を深めるのではなく、広い視野をもって学びを得てほしいと思っています。教科書に書いてあることをただ覚えるのではなく、どの文献や論文に自分が求める知識や情報があるのか、すぐに引き出せるスキルが役立つでしょう。そのためには、普段からいろいろなものに興味をもって触れ、知ろうとする習慣が必要ですね。多角的な視点で集めた知識が互いに結びつくことで、初めて理解へ進むスタートになると考えています。

田倉先生にとっての「未来のエスキース」とは。

私にとってエスキースを描くというのは、考えを止めないこと。上手くいくかわからないけれど、新たな着想に考えを巡らせている時間が一番楽しいと感じています。エスキースには下絵という意味がありますが、まずは私も鉛筆と紙だけを使って回路を書くことで、発想の出発点にしています。それを実現させるために、どのようなコイルが必要か、どういった実験をしなければいけないのかを検討しながらそこに計算式を加えていくので、A3の用紙が3枚、4枚と続く時があります。完成してしまうと途端に現実に引き戻されてしまうので、研究者としてはこの時間が最も至福ですね。

COLUMN

わたしと

テレビゲーム

ゲームは遊び?それともスポーツ?

テレビゲームとの出会いは小学生の頃だったと思います。今から30年以上も前のことです。ネットやスマホもない時代で、話題の中心がゲームの進捗や攻略法になることもしばしばで 生活の一部どころか中心になるときもありました。受験の時期でもプレイすることを止めず、親には心配をかけたかもしれません。最近、思うことがあります。操作が難しいと。昔と比較して現代のコントローラーは操作する箇所が非常に多く、ゲーム内のキャラクターをスムーズに動かすためにはかなりのやり込みが必要になります。また、画面内に表示される情報も多く、その情報を瞬時に判断し、手の複雑な動きにつなげるところはスポーツに近い感覚です。休日はこのスポーツを楽しむことが多々あります。目標を立て、思考し、それを試行してうまくいったときの達成感は研究活動のときと似ているかもしれません。認知機能に影響するという報告もあり、これからは単なる遊びの域を超えていくかもしれません。と言いながら、言い訳がほしいだけかも…。皆さんもゲームはほどほどに。