東北工業大学

工学部

都市マネジメント学科

小野 桂介講師

Ono Keisuke

PROFILE

2009年3月に東北大学工学部建築・社会環境工学科を卒業。日本学術振興会の特別研究員(DC1)を務めながら、2014年3月に東北大学で博士(工学)の学位を取得。同年4月に株式会社建設技研インターナショナルに就職し、開発途上国での国際協力を主な業務とする開発コンサルタントとして様々なプロジェクトに取り組む。本学には、2022年9月に工学部都市マネジメント学科の講師として就任し、現在に至る。建設部門・上下水道部門の技術士。

担当科目
環境防災工学
水理学基礎Ⅰ・Ⅱ
プログラミ ング入門
都市工学実験Ⅱ
海工学
研究室・教員紹介

※役職・担当科目および研究内容は取材当時のものです。

THEME水の災害から命を守る防災情報を
ゲームの世界で楽しく習得

THEME水の災害から
命を守る防災情報を
ゲームの世界で
楽しく習得

豪雨により引き起こされる川の洪水や都市部の浸水、土砂災害などについて研究を行っている小野先生。洪水ハザードマップとMinecraft(マインクラフト)を組み合わせた小中学生向けの防災教育ツールの開発にも取り組み、国土交通省主催の「PLATEAU AWARD 2022」に出展した「キッズ向けさいがいMAP」でファイナリストに選出。「仙台防災未来フォーラム2023」にも出展し、多くの関心を集めました。

人道支援に生きた偉人に触発され水資源に関わるスペシャリストへ

水工学の分野に進む出発点とは。

高校生の時、NHKのTV番組で、アフガニスタンで医療活動を行いながら用水路や井戸を各地で建設していた医師の故・中村哲先生の偉業を知ったことで、水資源や渇水、洪水などへの興味が生まれ、東北大学工学部への進学を決めました。株式会社建設技研インターナショナルに就職後、アフガニスタンの技師たちを福岡県朝倉市の山田堰(やまだぜき)へ案内する業務で中村先生に対面する機会に恵まれ、直にお話しできたことで、自分が目指してきた目標につながった手応えを得られた気がしました。当時、私はまだ若手でしたが、中村先生は真摯に耳を傾けてくれて、握手もしてくださいました。アフガニスタンの技師たちも、中村先生と同行できることを喜んでいたのが印象に残っています。

建設コンサルタントになった動機は。

大学時代には、中村先生への憧れもあって、発展途上国で命を懸けて頑張ってみたいと思ったことがありましたが、自分が技術者として何ができるかを突き詰めていくうちに心境の変化が生じ、最終的に建設コンサルタントの仕事に進む道を選びました。

ブロックで表現される仮想世界で都市の浸水被害をシミュレート

Minecraftを活用した子ども向け防災教育ツールを開発する
きっかけとは。

実は、建設技術研究所時代に構想が既にあって、社内コンペで優勝したのを契機に自分のアイデアを具体化しようと取り組むようになりました。Minecraftを活用しようと思いついたのは、私の息子が熱中して遊んでいたから。人気YouTuberがMinecraftに関する動画をたくさんアップしていますが、これほど多くの子どもたちを魅了しているゲームをベースにすれば、小さな子どもでもすぐに関心を持ってくれるのではないかと考えました。

本学で取り組みを継続する経緯となったのは。

Minecraftのライセンスについて調べたところ商業利用の難しさがあり、自分が目指すべき方向性が企業の外にあることに気付きました。そして、アカデミックな場で取り組んだ方が、完成への近道ではないかと考えたのが、本学へ赴いた理由の1つです。

ツール制作で目指した目標とは。

より多くの学校で使ってもらいたいので、なるべく費用の負担が少なく済むことを課題に掲げました。地理データの変換と読み込みには、カナダのSafe Softwareが開発したソフトウェアプラットフォーム「FME」が比較的安価に利用できることが分かり、そこから向かうべき流れをつかむ一歩になりました。地形情報に関しては、国土地理院が無料配布しているデータがあるのでハードルは低かったのですが、問題は建物。地図会社や測量会社が販売しているデータの見積もりをとったのですが、これがかなり高額だったので暗礁に乗り上げてしまいました。しかし偶然、国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」の存在を知り、ちょうどデータ公開の時期と重なったことが幸運でした。
建設コンサルタント時代には、行政を対象にした浸水想定区域図やハザードマップの作成業務も携わっていましたが、子どもの利用を想定するまでに至っていませんでした。「キッズ向けさいがいMAP」を子どもたち自身が操作を楽しみながら利用し、防災教育のアクティブ・ラーニングとして有効な手段となることを願っています。

子どもたちへの周知と普及を目指し小学校での出前授業を

普及のために実践していることとは。

仙台市では、学識経験者や企業などが実施できる環境学習講座の情報を集約し、市内の学校や地域団体へ紹介する「せんだい環境学習講座」に取り組んでいますが、私も小学校を対象に「興味・関心を引き上げる子ども向けの防災教育」として登録しています。どれだけ小学生の関心が集められるかまだ未知数ですが、1つでも多くの学校で実績を作れればと思っています。

この研究室で学びたい学生にアドバイスを。

最新のテクノロジーに敏感なアンテナを張りめぐらせ、今、話題のChatGPTといった先端技術へ積極的に触れていこうとする姿勢が大事です。また、PLATEAUのような利用価値の高いオープンデータや無償ツールなどを知っておくことで、研究における有力な味方になるでしょう。また、自然に関する学問なので、キャンプでも芋煮会でも何でもいいので、学生のうちに山や河川などに親しむ経験を得て、現地調査やフィールドワークで活躍できるフットワークを身につけてほしいと思います。

COLUMN

わたしと

睡眠

忙しくても夜の十分な睡眠を

皆さん、ちゃんと寝ていますか?授業中ではなく、夜の睡眠。先日のNews Picsの落合陽一先生と柳沢正史先生の対談では、「寝る子は育つ」、「睡眠不足は太る」、「睡眠不足で認知症のリスク4倍」など睡眠に関する議論がありました。かく言う私は良く寝ます。子供の就寝に合わせて9時に寝て、朝6時まで寝るので9時間くらい。時々、夜2時に目が覚めて仕事をすることもありますが、平均8時間は確実に寝ます。
「眠い時に勉強しても頭に入らないから寝た方が良いよ」、よく寝ることを意識したキッカケは高校時代に兄から言われた一言でした。以来、忙しい時も意識して睡眠するように心がけ、そのおかげかこれまで身体的にも精神的にも健康にきました。学生も社会人も、悩み事の原因を紐解いていくと睡眠不足に伴う体調不調にある場合も多いと感じます。仕事・遊びを優先すると不足しがちな睡眠時間。しつこいですがもう一度。皆さん、ちゃんと寝ていますか?