東北工業大学

ライフデザイン学部

経営コミュニケーション学科

川島 和浩教授

Kazuhiro Kawashima

PROFILE

1990年に駒澤大学大学院経営学研究科修士課程を修了し、経営学修士を取得した後、明治大学大学院商学研究科博士後期課程へ進む。1994年~2000年、岩手県立宮古短期大学(岩手県立大学宮古短期大学部)の専任講師に就任。2000年~2020年、苫小牧駒澤大学(現:北洋大学)で教授、学長を歴任。2020年4月から現職に就く。

担当科目
会計学入門
簿記論
財務会計論
中小 企業会計論
経営・会計学特論(大学院)
研究室・教員紹介

※役職・担当科目および研究内容は取材当時のものです。

THEME会計情報に基づき企業や組織のしくみを考え
サステナブルな新時代のビジネスモデルを模索

THEME会計情報に基づき
企業や組織のしくみを考え
サステナブルな新時代の
ビジネスモデルを模索

企業や組織の活動を貨幣額による数値で把握し、その情報を測定して経営状況や社会における経済への影響などを考察する会計学を専門に、主に中小企業における管理会計手法の導入状況を研究している川島先生。さらに、2015年に国連サミットで策定されたSDGsの取り組みが、企業の経営管理にどのような変化をもたらし、管理会計手法にどのような影響を与えているか関心を深めています。

川島研究室の様子

ものづくりの先で活躍の場を得るための
工業大学ならではの管理会計を啓発

会計学とはどういう学問なんですか。

単純に言ってしまえば、企業がどのくらい儲けたのかを数字で表すのが会計です。企業が1年間に行った取引を記録・計算・整理し、会計情報として財務諸表に取りまとめ、これを株主などのステークホルダーに対して報告していく一連の手続きが会計の仕組みとなります。企業の行動そのものが数字となって表示される会計情報は、経営者や管理者が中長期の経営計画を策定する上での重要な要素となるので、誰がどのように情報を扱うのか、その役割や影響について考えるのがこの学問領域です。

工業大学で扱う学域としては珍しいと思うのですが。

これは、本学が掲げている“文理融合”の理念に則った学びで、専門的な工業技術を修得した学生たちが卒業後、起業やマネジメントに携わる立場でも活躍できることを願い、経営を数字で考えるノウハウを身につけてもらうのが目的です。経営コミュニケーション学科では、将来、社会で自立した活動ができる優秀な人材を育成するのが目標であり、複合的な学びの修得が学生の可能性の幅を広げる原動力になるのでは、と私は考えています。

グローバル化が進む現代社会で考える
数字で把握するビジネス手法とは

会計学で得た学びはどんなシーンで役立ちますか。

現在、企業や組織をどのように存続していくかを考える上で、目先の利益だけを追い求めるだけではない新たなサステナビリティモデルを作り上げることが、最も重要視されていると感じています。最近は、コロナ禍によってリモートワークを強いられ、通常の業務に大きな制約がある状況下にありますが、企業は常に経済活動を続けていかなければつぶれてしまいます。この現実を受け止めながら、どのように行動すれば儲けが得られるか自発的に考えられる姿勢が求められているのではないでしょうか。企業経営の仕組みをしっかり理解した上で事業戦略を練り、ターゲットを絞り込んで予算を組み、数字で企業の行動をチェックしながらビックビジネスに向けた投資を第二の矢、第三の矢と放つ。そのような視点で事業運営ができ、画期的なアイデアを発想できる人材を輩出できればと思っています。

会計学も時流に即した内容に変遷しているのですか。

このグローバルビジネスの時代、会計の測定対象の幅も広がりを見せています。以前のように株主や投資家に対するアカウンタビリティ(財務情報を説明する義務)だけでは留まらず、男女の格差なく雇用を生み出しているか、地域社会をどれくらい潤しているかといった、ソーシャルな課題への貢献情報に重きを置く傾向になっていると感じています。

現在、企業が最も意識すべき取り組みとは。

本学でも「東北SDGs研究実践拠点」を置いて推し進めていますが、世界的な動きを見せているSDGsの目標は、国家のみならず、大企業、中小企業を問わず積極的に取り組むべきでしょう。そして、企業の経済価値と社会価値の両立に関する情報の発信が企業のメリットにつながると考えています。今後、企業がどのように情報を開示し、サステナビリティ実現の座標軸にしていくか、強い関心を寄せています。

会計情報を読み解く面白さとともに
企業人として輝く自分を思い描いて

研究室の学生はどんな課題に取り組んでいますか。

この研究室では、卒業研修で企業の経営分析に取り組んでもらっています。どんな企業を研究対象にするかは学生たちの希望に添って選定しており、今、話題の企業がどのように儲ける仕組みを作っているか、興味を持って考える機会づくりをしています。そういう視点の捉え方を応用し、いつか自分でビジネスを始める際に、理想のモデルとして活用してくれることを願っています。

会計学をどんな学生に学んで欲しいですか。

確かな数字の裏づけによって取引先を納得させるビジネスの醍醐味を味わいながら企業で活躍する将来像を思い描いている有望な学生に、ぜひ会計学を学んで欲しいですね。工学部や建築学部の皆さんにも、そのような視点で学んでもらえることを望んでいます。

COLUMN

わたしと

格言

学恩に報いるにはどうするか?

私の座右の銘は「行学一如(ぎょうがくいちにょ)」。仏教の禅(ZEN)の精神に基づく行学一如では、学問研究の「学」と実践実行の「行」とは一体であると説きます。学んだ知識を活かし、地域社会に貢献できる行動を心掛けています。
会計学の研究者として3つの大学に奉職して28年目。学生に望むことは、経済社会の仕組みを理解すること、会計情報の良き利用者として適切な判断と意思決定をすること。
一般に経済取引は、複式簿記の記録をその拠り所として成立します。会計帳簿への記録がなければ、誰も経済行為を認識できません。会計には経営活動の「写像」を描く機能がありますが、経営者が倫理的な行動を逸脱したとき、「虚像」が多様なステークホルダー(利害関係者)に情報伝達されることになります。
指導教授をはじめとする多くの恩師からの学恩に報いているか、自問自答しています。楽しみながら研究成果を継続的にアウトプットすることが理想です。