工学部 情報通信工学科/通信系
北 元 研究室
電磁波測定から惑星環境を調べる
電波は情報通信技術の中で重要な役割を果たしていますが、自然界にも、オーロラや雷、太陽表面の爆発など、電波を放出する現象が数多く存在します。また、太陽系の外にある銀河や惑星からも、電波が放射されています。これらの電波は電波望遠鏡と呼ばれる,大型のアンテナで観測することができ、惑星大気や磁場,周囲のプラズマの状態を解析するための重要な手段となっています。将来的には、宇宙でおきる災害の予防などにも広く役立つことが期待されています。本研究室では電磁波計測を通して、惑星で起こる諸現象や太陽が惑星環境に及ぼす影響の解明を目指しています。
准教授
北 元
KITA Hajime
学位
博士(理学) 東北大学2015年
略歴
2015年4月 - 2018年3月 | 東北大学大学院理学研究科 研究員 |
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2018年4月 - 2020年3月 | 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 日本学術振興会特別研究員 |
2020年4月 - 2023年3月 | 東北工業大学 工学部 情報通信工学科 講師 |
2022年4月 - 現在 | 東北大学大学院理学研究科 客員研究員 |
2023年4月 - 現在 | 東北工業大学 工学部 情報通信工学科 准教授 |
研究分野
電磁波計測・宇宙惑星科学
担当科目
- 物理学I
- 物理学II
- 情報通信工学実験I
研究室所属学生の卒業研修(論文/設計/制作)
- 太陽・惑星電波観測用広帯域アンテナの開発
- 系外惑星のオーロラ電波探査
- 東北大学蔵王観測所の周波数利用状況の測定
- ソフトウェアラジオを用いた電波環境計測システムの開発
- 飯舘惑星電波望遠鏡を用いた電波パルサーの研究
研究テーマ
木星電波の研究
地球には磁場があり、周囲に放射線(エネルギーが高い粒子)が帯状に分布した「放射線帯」が存在します。この放射線帯粒子は時間と共に増減し、増えると地球を回る人工衛星や宇宙飛行士に悪影響を及ぼします。しかし、どういう時に増減するのか、その仕組みは解明されていません。そこで注目されるのが木星です。木星は、地球と同じように磁場や放射線帯を持ち、太陽系惑星の中で最も強い電波を放射しています。この電波は、地上の電波望遠鏡で観測することができ、放射線帯粒子の増減を調べることができるのです。地球と木星との類似点や相違点に目を向けることで、「太陽と惑星」の間に成り立つ根本的な関係性を理解できるのではないかと期待されています。
系外惑星のオーロラ電波探査
これまで多くの系外惑星が発見されており、第二の地球探しの流れが加速しています。系外惑星の生命環境を議論する上で欠かすことのできないのが、磁場の存在です。磁場は、太陽の有害な放射線から惑星を守る役割を持ちますが、系外惑星の磁場の有無を判断するのは容易ではありません。磁場を持つ惑星にはオーロラがあり、オーロラに起因する電磁波が放射されることから、惑星からの電波を用いた検出方法が着目されています。当研究室では、インドやフランスの大型電波望遠鏡で系外惑星を観測し、惑星磁場の発見に挑戦しています。
周波数利用状況の測定
宇宙からの微弱な電波信号を観測するためには、高精度な受信機を用いて電波を受信します。しかし、周囲に強い電波の発信源がある場合、それらの電波により受信機の増幅器が飽和し、観測データの品質を低下させてしまいます。そのため、どのような周波数帯で、どういった時間帯・方向から電波が発信されているか調査することで、こういった人工電波障害を避けることができます。当研究室では、ソフトウエアラジオと呼ばれる、プログラマブルな受信機を使用して、東北大学蔵王観測所などで測定を行っています。
低周波太陽・惑星電波観測システムの開発
世界にはインドやオランダに大型電波望遠鏡が存在しますが、これらの施設は利用時間が限られており、年に数日程度しか使用することができません。一方で、太陽や惑星は日スケールで変動しており、継続した観測が必要です。そこで、自前の観測装置を用いて、太陽・惑星に特化した観測システムの開発を目指しています。当研究室では、広帯域のアンテナの開発を行っており、八木山キャンパス3号館屋上や,福島県にある飯舘惑星電波望遠鏡を用いて試験を行っています。