東北工業大学

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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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空を見上げれば

VOL.048 北 元(情報通信工学科)

天文学の歴史は紀元前に遡り、暦を知るために天体の位置を調べたのが始まりと言われています。私の専門は、いわゆる電波天文といって、天体から放射される電波を用いた研究しています。主に木星から放射されている電波を研究していますが、電波だけでなく赤外線や紫外線を用いた研究もしています。やはり、こういった研究をしている人は、必然的に天文関連の話題には興味を持っているものです。かく言う私も、星の観察には昔から興味があり、小学校でもらった星図盤と双眼鏡を持って、良く観察したものです。大学生のときにカメラを買ってからは、天文イベントの度に活躍していました。

関東での学会に参加したときに遭遇した、金環日食(2012年5月21日撮影)。天候は曇りでしたが、雲が薄い部分がちょうどよく減光フィルターの役割をしていたため、綺麗に撮影できました。

嬉しいことに、今年は6月に皆既月食、11月に部分月食がありました。11月の月食は記憶に新しいと思いますが、皆さんご覧になったでしょうか。月は普段から満ち欠けを繰り返しているので、日食に比べて地味で珍しさを感じないかもしれません。しかしながら、皆既月食の時に、地球の影に入った月が赤く光っている様子は、何とも言えない神秘的なものを感じます。因みに、赤く見えるのは夕焼けと同じ原理です。波長の長い光は地球の大気で散乱を受けにくく、大気中を屈折してくるため、地球の影に入っていても赤く見えているのです。

ハワイのマウナケア山へ出張中に、たまたま遭遇した皆既月食(2014年4月15日撮影)。マウナケア山は4000m級の山で、日本のすばる望遠鏡をはじめ、多くの望遠鏡が設置されています。

こちらに赴任してから、小型の望遠鏡を購入し、3年生の研修で使用していました。講義は日中ですので、専ら太陽の観察に使用しています。今年の月食では、私が担当する情報通信工学科の物理学Iや物理学IIで案内を流し、希望する学生さんと一緒に観察を行いました。悲しいことに、天文関係に興味がある学生さんは数人のようです。日食や月食は、一生のうちで見られる機会が限られているため、もっとたくさんの学生さんに興味を持ってもらいたいところです。10号館脇の中庭のあたりに望遠鏡を設置し、スマートフォンを取り付け、月食の撮影に挑戦しました。なかなか取り付けに苦労しましたが、何とか写真を撮ることができました。トップの画像は11月19日の月食のもので、情報通信工学科の今野さんが実際に撮影したものです。食が最大となる20分程前の画像で、月の一部が残っている様子がわかります。恐らくスマートフォンのレンズの反射で、少し迷光(※想定される光路以外で発生する不必要な反射・散乱光)が見られますが、赤銅色の月が綺麗に撮れています。

大きく欠けた月と4号館・5号館(2021年11月19日撮影)。

残念ながら、食が最大になる直前に曇ってしまい、皆既近くまで欠けている様子は撮影することができませんでした。やはり、私が雨男なのが原因なのでしょうか(その点、私が専門としているメートル波帯の電波観測は雲の影響を受けませんから、雨男に最適と言えるかもしれません)。次回は晴れ男/晴れ女を揃えて観察したいと思います。次回の日食は2030年なのでまだまだ先ですが、月食は来年も起きるそうです。2022年11月に皆既月食があるようですので、また講義内で希望者を募集したいと思います。他にも、何かしらイベントがあれば、希望者を募って観察会を企画したいと思います。情報通信以外の学科でも、天文に興味がある人は情報を流しますので、是非お声がけください。

北 元 講師

東北大学で学位を取得し、宇宙科学研究所経て、2020年度より、情報通信工学科の講師としてお世話になっております。主に電波を用いて、惑星周囲の環境を調べています。一見すると、情報通信とかけ離れているように見えますが、情報通信の技術は宇宙科学に幅広く用いられており、実は親和性が高いのです。

北研究室

電波を用いて天体を調べたり、観測機器を開発したりしています。こちらは研修Iで太陽を観測している様子です。太陽は直接見てはいけないので、太陽投影板を用いて、太陽表面にある黒点を観察しています。横に付いているBSアンテナは、太陽から放射される電波を見るためのものです。この日は各自で作成した回路を用いて、太陽電波の強度を測ってみました。

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