東北工業大学

建築学部

建築学科

齋藤 隆太郎准教授

Saito Ryutaro

PROFILE

東京理科大学大学院を修了後、2008年から竹中工務店に勤務。2014年に退社してDOG一級建築士事務所を設立。2015年に東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士後期課程に進み、2021年に博士(工学)の学位を取得。同大大学院の特任研究員を経て、2022年に本学建築学部建築学科の講師に就く。現在は事務所代表を務めながら、本学准教授として教鞭を執っている。

担当科目
建築設計I
建築設計デザインⅢ
建築設計Ⅳ
研究室・教員紹介

※役職・担当科目および研究内容は取材当時のものです。

THEME使う人の目的や課題の解決を
適える建築の計画

THEME使う人の目的や課題の解決を
適える建築の計画

建築の初期段階である、用途や使う人の行動・心理に適した建物の「計画」を専門に学究を深めている齋藤先生。設計事務所の代表と教育者を務める多忙な毎日を過ごす中で、人を介在して考える理想の建築像を求めています。学生には、計画や設計が建築のクオリティを決める重要なファクターであることを説きながら、念入りな仮説と検証に裏付けられたアイデアが未知の魅力を生む建築の面白さを伝えたいと語っています。

後進の育成に力を注ぎながら建築家として自らの幅を広げる道へ

仕事と学業の両立は大変でしたか。

大学院を修了して竹中工務店の設計部で働いた後、独立して設計事務所を立ち上げました。さらに、日々の業務に追われながらも東京大学大学院に入り直し、博士の学位取得を目指しました。私同様、働きながら建築学専攻で学んでいる人は多かったようですが、博士論文を書き上げて課程を修了する人はあまりいませんでした。学位取得まで6年かかりましたが、そこまで頑張って成し遂げたことは、自分の自信につながっています。

教育者として進んだ理由とは。

未来ある学生たちに教えるという仕事に、強い関心があったのが第一の理由です。そして、大学に身を置くことで、アカデミックな領域とつながりを持てることに魅力を感じていました。それぞれの専門分野に長けた先生や学会、大学だからこそ取り組める大きなプロジェクトに関わることが建築士としての自分に大きなメリットをもたらしてくれると思い、実際、自分の可能性を広げる機会にも恵まれたと感じています。

人と真摯に向き合って考えを巡らせ味わい深く使いこなせる建築を計画

研究の専門分野を教えてください。

建物の用途や使う人の行動・心理に適した建物を計画する建築計画学を専門としています。建物が完成したらどんな人が使うのか、どんな使われ方をしてもらいたいか仮説を立てて検証し、論述的にまとめて設計にフィードバックします。建築は、構想・計画・設計・施工・管理・運営までの一連を内包する総合学問で、実務に就いていればアフターフォローまで一貫して立ち会うこともありますが、学生は不可能です。私自身の経験を元に、建築をさまざまな視点からアプローチできることを教えたいと考えており、特に構想・計画に立ち会う建築士の仕事は、ピュアに人と向き合う面白さがあると知ってもらいたいです。

齋藤先生が考える良い建築とは。

建築家それぞれにポリシーがありますから明言はできませんが、東京大学大学院の恩師である大月敏雄先生の言葉を借りると“味わい深く使いこなせる”という表現になるでしょうか。私の事務所で最近掲げているテーマは“いい塩梅”。これは、曖昧な逃げの言葉でちょっとずるい感じもしますが、感覚的な建築の良さを言い表していると思っています。建築に求められる用途や目的によって違いますが、機能や居住性を追求するとともに、非日常感やアグレッシブな演出の要素も大切なのではないかと思っています。それが“味わい深く”というフレーズに集約されています。

ユニークな視点による建築を手がけたと聞きました。

東日本大震災で深刻な被害を受けた陸前高田市で、高齢者を対象にしたサービス付き高齢者向け住宅の計画に携わりました。被災して間もない同地で、知らない人同士のコミュニティを醸成する温かな空間を作りたいと思い、約2haの高台斜面地を活用した南側に縁側廊下、北側に居室を配する建築計画を提案しました。斜面に立地しているので居室にも十分な採光を確保でき、暖かな南向きの縁側に自然と利用者が集まる仕組みです。これも仮説を立てて検証し、構想がうまく形になった好例ですが、使用者の目線で考える作業を繰り返していくことが、建築家としての成長につながったと考えています。

論理と実績を確実に積み重ね新しい発想を形にする挑戦を

新たに挑戦していることはありますか。

数人の建築家と一緒に、建築と農業がテーマの団体を立ち上げました。現在、不要となった衣類をほぐしたポリエステルから作った培土を活用した建築や場を構想するなど、試行錯誤している段階です。建築の技術で農業の発展に寄与することを目的に活動しており、本学の学生も巻き込んで調査などができればと思っています。また、縦割り行政の制度にとらわれない、高齢者や障害者などの困りごとを受け入れられる福祉の建築も目指しているところです。

齋藤先生にとっての「未来のエスキース」とは。

建築用語としておなじみの言葉ですが、私事として捉えると、本学で学生を育て、研究論文を書き、建築を手がけるという3本の柱で、建築家として積み重ねるための素地でしょうか。着実にステップアップを続けながら、自分が作ったものを世の中に示していくことが何よりも大事だと思っているので、常に新しい発想の下で設計した建物が、より多くのリアクションが得られるよう励んでいきたいと思っています。

COLUMN

わたしと

ビール

学生にも知ってほしい語りつくせぬビールの奥深さ

若者の酒離れが叫ばれて(韻を微妙に踏んでいます)久しいですが、研究室の学生を見る限り、どうやら確かなようです。ただしサワーやカクテルチューハイなんぞを好む人は多く、つまり若者のビール離れ、というのが正しい見解かもしれません。それは国産ビールの殆どが「ラガー」ビールであって、大量生産可能かつ喉越しを意識した、いわゆる「我々世代、我々の親世代」にドンピシャの味わいだからでしょうか。今でこそクラフトビール屋が増えましたが、昔はラガー一択だったのです。 
最近のクラフトビール屋では、ラガー(下面発酵)よりも、香り高いペールエール(上面発酵)がつくられることが多いです。さらにIPA(インディアペールエール)といって、製造過程で「追いホップ」をすることで、ホップの苦く香り高い味わいをダイレクトに感じられるビール、さらにコリアンダーやオレンジピール等を投入したフレーバー系ビール等、私の嗜好を挙げると枚挙に暇がありません。特にベルギービールは最高で、中にはトラピストビールといって…。書ききれないので続きはまたどこかで…。