東北工業大学

ライフデザイン学部

経営コミュニケーション学科

宮曽根 美香教授

Miyasone Mika

PROFILE

国際基督教大学卒業後、デュポン株式会社に入社、実験データの翻訳や特許関係の仕事等に携わる。その後ニューヨーク大学教育学部大学院でTESOLを専攻し、本学には1993年(文科系学科)講師として着任。96年に人間科学センター助教授、2007年に教授、08年にライフデザイン学部経営コミュニケーション学科の教授となり、現在に至る。15年に東北大学大学院教育学研究科博士後期課程を修了し、博士(教育学)を取得している。

担当科目
コミュニケーション入門
対人コミュニケーション
チャレンジアブロードプログラム
ドキュメントコミュニケーション
身体表現研究
研究室・教員紹介

※役職・担当科目および研究内容は取材当時のものです。

THEME人との共生を可能にし、つながりを生み、
幸福度を高めるコミュニケーション

THEME人との共生を可能にし、
つながりを生み、
幸福度を高める
コミュニケーション

ニューヨークの複雑な言語環境を経験し、日本人の英語コミュニケーションに洞察を深めていった宮曽根先生。さらに視野を広げ、コミュニケーションの性質や力を理論的に捉え、学術分野も横断しながら多方面で検討を行う研究にも取り組んでいます。そして、良好なコミュニケーションが導くwell-being(心・体・人が満たされた幸福)と共生の未来はどんなものであるかを、時流なども鑑みながら追求しています。

お国訛りの英語が飛び交う大都市で
英語コミュニケーション研究に傾倒

研究者の道に進むきっかけは。

企業を退職後ニューヨークで大学院生活を送ったのですが、この都市はhotchpotch(ホッチポッチ:野菜のごった煮)と呼ばれているように、多民族・多言語の人々がそれぞれ自己主張しながら一生懸命暮らしています。彼らが母語の訛りを含んだ英語を使い、文法や用法のミスを気にせず話していることにカルチャーショックを覚えました。私は彼らとの対話を通して、第二言語習得環境では言語習得のモチベーションが高いことを認識しました。その上で、英語を母国語としない人々にどのように英語を教えるかに興味を持ったことが、この分野の研究に進むきっかけとなりました。
日本人は長期にわたって英語を学んでいるのにミスを恐れ、英語でのコミュニケーションを苦手としている人が多いと感じます。外国人が堂々と英語を使う姿と対照的なのも強く印象に残っており、日本語という母語の影響を強く受ける日本人が、英語でのコミュニケーションを円滑にするためにはどのような方法がベストかを知りたいとも思いました。

コミュケーションと幸福度の関わりを
多分野の知見を取り入れながら検討

どのような研究に取り組んでいるのですか。

私の研究は、コミュニケーションへの切り口、関わり方で変化していきました。第1フェーズにあたる期間では、ニューヨークでの体験が出発点となり、英語による他者への円滑なメッセージの伝え方と、メッセージの理解の仕方にフォーカスしました。英語を学ぶ上で、日本人が抱える困難点となっている音韻認識、ロジックについて検討し、英語学習の初期段階で習得できる方法を探ってきました。
そのような中、コミュニケーションは幸福感と深いつながりがあるという海外の研究の知見に触れ、他者との関係性にフォーカスしてコミュニケーションを研究する第2フェーズに発展しました。価値観や立場の違いなどが介在する相互関係の中で、どのように共生し、良好な関係を作り出すか。そこから、肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態にあるwell-being(ウェルビーイング)という概念に及びました。
これは単独分野の研究では難しく、経済学の金井教授、心理学の二瀬准教授と共に学内でWell-being研究所というプロジェクト研究所を立ち上げ、幸福について学際的に検討し考察を深めているところです。

肉体的に満たされたwell-beingのためには。

私は、個人スタジオでハタヨガのインストラクターとしてヨガの指導を行っています。よく知らない人には、ヨガはストレッチ体操のように捉えられがちですが、呼吸を丁寧に行いポーズをとることで内なる自分と対話し、同じ空間と時間を共有する他者ともプラーナ(エネルギー)を感じ合う、コミュニケーションの手段になります。本学でも、「身体表現研究」という授業で学生たちに体験してもらっています。

地域活動で関わっているヨガクラスの風景

意味の共有と相互理解を図りながら
相手の幸福度も上げる対話の心がけを

学生に最も学んでほしいことは。

状況・文化両方のコンテクスト(文脈、背景)を踏まえて、コミュニケーションを図ることを意識してほしいと思っています。コンテクストを把握することで、コミュニケーションの手法や意識すべきポイントも異なります。ビジネスシーンだと、相手との情報共有や相手を説得し、アクションを起こさせることが目的となり、そのためのスキルを身につけることが求められます。より私的な対話だと、共感と受容の姿勢も必要です。どちらにもセルフモニタリングと聴く力が大切です。また、低コンテクスト文化の人と話す時には、まず先に結論を明示し、その後で具体的な理由を述べることを心がけてください。そして、メッセージの受け手は自身のフィルターを通して意味づけを行うので、相手が理解してくれることを前提にせず、相手と意味が共有できているかを確認することも大切です。
これらは、社会人になってすぐに身につくようなものではありません。本学での学びを実践し、試行錯誤を続けて修得してください。

本学科で学ぶ学生に望むこととは。

2つあります。1つ目は、これまで自分が体験した出来事や事象をコミュニケーション学の観点で解釈し、理解すること。2つ目は、コミュニケーションが持つ力を意識して対話をしてほしいということです。これからの社会は、多様な考え方や価値観を持つ人たちとの共生が、より求められていく時代になるでしょう。コミュニケーションは、自分だけでなく他の人たちの幸福度も上げる力を持っています。ゆえに、それらを意識して他者とのコミュケーションを深めてほしいと願っています。

COLUMN

わたしと

旅はコミュニケーションの宝庫~時には自分との対話も~

旅に出ると、普段とは異なるコミュニケーションを体験することができます。大学2年次、寮の友達と2人で北米を1カ月かけて周りました。図々しくも、北米在住の先輩方に手紙を書き、泊めていただきました。大学3年次には一人でザックを背負って、1カ月間ヨーロッパを巡りました。宿は決めず、宿泊する日に現現地のユースホステルかB&Bに連絡をしました。いずれの旅でも、現地の人たち、外国人や日本人の学生たちとのコミュニケーションを通して、楽しい思い出を作ることができました。直近では、2019年に息子、娘と3人で訪れたNY旅です。大学院時代に過ごしたグリニッジビレッジに滞在し、暮らすように旅をしました。私が研究者としての一歩を踏み出した街は変わらずエネルギッシュでしたが、人々が優しくなっていました。今回は自分と対話をしながら、共生のためのコミュニケーションも意識しました。どの旅にも、何らかのコミュケーションと気づきがあります。