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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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コワい爬虫類をカワイく

VOL.059 堀江 政広(産業デザイン学科)

私の専門分野は、情報デザインです。そして東北大学大学院情報科学研究科人間社会情報科学専攻のメディア文化論研究室で博士研究をしました。今回は、たくさんある堀江の趣味の中から「爬虫類飼育」を専門性(情報デザインとメディア)とからめて紹介します。堀江研究室では2022年に、エキゾチックアニマルの展示・即売イベントの「東北ペットフェス」のWebサイトとフライヤーをデザインしました。主催者からは「家族連れやカップルが来場する様な、親しみを感じられるビジュアルデザインをしてほしい」との要望があり、研究室の学生がデザイン・制作しました。このイベントには東北各地から大変多くの来場者がありました。そしてエキゾチックアニマルを扱うペットショップの店員さんからは、「爬虫類飼育のイメージが悪い(コワくてキモい)ので、イメージを良くしたいのですが、どうしたらいいでしょうか?」と伺ったことがあります。そこで今回は、爬虫類が好きな方に向けて、我が家では「カワイくてカッコいい爬虫類」の一部を紹介します。なおマニアックかもしれない箇所には、開始タグ<マニアック>と終了タグ</マニアック>で囲みました。

1.セイブシシバナヘビ(英名:Western hognose snake、学名:Heterodon nasicus)
我が子(未就学児)から「誕生日のプレゼントにヘビが欲しい!」とリクエストがありました。そして家族みんなでセイブシシバナヘビ(メス)を選びました。決め手は、名前の由来にもなっている反り上がった鼻先(猪鼻)と明るいグレーの体色、モゾモゾ(ニョロニョロではない)と動く姿が愛くるしかったからです。生体が飼育環境に慣れ始めた頃に、「このヘビの子供を見たい」となり、ペットショップに相談してオスを購入しました。繁殖の時期に同じケージに入れるとオスがメスにくっついていますが、交尾の確認はできていません。家族みんなが、シシバナベビーが生まれる日を楽しみにしています。

セイブシシバナヘビのメスはどちらでしょう?

<マニアック>「爬虫類と遺伝情報」について。写真のメス(大きい方)とオス(小さい方)の繁殖がうまくいくと、100%の確率で「アークティックアナコンダ」のモルフが誕生します。モルフとは体色や柄の遺伝情報が固定した品種のことです。メスのモルフは、「JMGスーパーアークティック(JMGというブリーダーのブランドのアザンティック〈黄色い色素がないという意味〉のスーパー体)」です。オスのモルフは「スーパーコンダ(モルフのアナコンダはヘビのアナコンダの柄に似ていることから名付けられたが、スーパー体になると頭部以外の柄が無くなる)」です。「スーパー体」とは共顕性遺伝するモルフがホモ接合した際に用いられる表現です。「アークティックアナコンダ」はアークティックの体色にアナコンダ(アミメニシキヘビ)に似た柄となるモルフです。</マニアック>

2.コバルトツリーモニター(英名:Blue tree monitor、学名:Varanus macraei)
妻がペットショップのブログを見ていた時に、「見てみたい」と教えてくれたトカゲです。仙台のペットショップでは1年ほど見ることができませんでした。ペットショップからは「欲しければ仕入れます」と言われましたが、購入する約束はできないので申し出を断りました。しかしながら複数のペットショップが集まるイベント(ペットショップが主催した応援販売会)があり、初めてコバルトツリーモニターを見た時、妻と共に青色の美しさに魅了されました。コバルトツリーモニターはオスとメス共にアダルトになっても常に青い体色です。繁殖を目指して、冒頭に紹介した東北ペットフェスでオスを購入しました。11月に交尾を確認したので、産卵に期待しています。

コバルトツリーモニターを飼育している有名YouTuberは誰でしょう?

<マニアック>「YouTubeの特化型チャンネル」について。このイベントのゲストの爬虫類系YouTuberのアニマルタイガさん(チャンネル登録者数 15.2万人)に、我が子が会いたがったのでペットショップに行きました。アニマルタイガさんの来仙のおかげでコバルトルリーモニターと出会えた、と言っても過言ではありません。爬虫類系YouTuberが来仙するイベントにいくつか行きましたが、どこも盛況でした。コバルトツリーモニターは有名YouTuberのフィッシャーズ(チャンネル登録者数 772万人)のリーダーであるシルクロードさんが飼育しています。コバルトツリーモニターについては、個人チャンネル「ロードシルク」(チャンネル登録者数 76.7万人)で動画を配信していますので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。フィッシャーズは特化型チャンネルではありませんが、個人チャンネルで特化したコンテンツを配信したり、メンバー個人が他の特化型チャンネルのYouTuberとコラボしています。飼育方法を詳しく知りたい場合は、英名で海外の動画を検索することをお勧めします。なおYouTubeのチャンネル登録者数は2022年11月29日時点のものです。</マニアック>

3.オルナータトゲオアガマ(英名:Ornate Mastigur、学名:Uromastyx ornata)
草食性のトカゲを探している時にトゲオアガマを知りました。尾のトゲが特徴で、巣穴(シェルター)の出入口をこの尾で塞ぎます。トゲオアガマの中でもオスの青さが気に入って、オルナータトゲオアガマの飼育を始めました。慣れてくると餌の野菜を人の手からでも食べます。そして手の上に生体を乗せる「ハンドリング」もできます。オルナータトゲオアガマの繁殖は難しい様ですが、アダルトになったらチャレンジします。

オルナータトゲオアガマが何匹いるでしょう?

<マニアック>「データと情報」オルナータートゲオアガマを2ペア(4匹)を同じケージで多頭飼育しています。多くの爬虫類は単独飼育が推奨されています。それは、オス同士の縄張り争いで傷ついたり、相性が悪い場合に弱い生体が餌を食べられずに衰弱することがあるからです。最初に1ペアを多頭飼育し、次にもう1ペアを加えました。生体の状態を管理するためには、体重と体長のデータの他に、見た目の情報(観察)も重要です。「データ」はバラバラの要素で、「情報」とは関連づけられた要素です。トゲオアガマは胴体がでっぷりして、栄養を蓄える尾が太い方が健康的とされています。他にも、餌を食べている量についても観察します。</マニアック>

最後にメディア・リテラシーとクリティカルシンキングについて、爬虫類を例にしてお話しします。ペット爬虫類については爬虫類カフェで触れ合える種類が逃げた場合でも、マスメディアでは「恐ろしい生き物」としてニュースにしたいと思われる節があるとのことです(日本爬虫類両生類協会理事長、白輪剛史さんのTwitterより)。特定動物に指定されていないペット爬虫類のほうから、人を襲うことはまずありませんし、臆病な生体は襲われないために隠れます。長さが強調されるヘビですが、とぐろを巻くとかなりコンパクトです。ニュースではより大きく伝えたいからでしょうか、トカゲは体長(頭胴長)ではなく、尻尾までを含めた全長を伝えます。体重については犬猫よりも軽いのでインパクトがないからか、ニュースではまず伝えらません。ペット爬虫類が逃げた場合のマスメディアのニュースついて不安を感じた場合には、SNS(TwitterやYouTube)で動物園関係者とペットショップ関係者による解説を確認してください。
爬虫類飼育に興味を持ったら、Webの記事やYouTube(古い情報とそれらを流用しているページがあります)だけでなく、信頼できるペットショップで最新の情報を入手して、アドバイスを受けてください。メディア・リテラシーにはクリティカルシンキングは重要です。

堀江 政広 教授

専門は情報デザインです。特にアプリケーションソフトウェアのUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインと、デザイナーとソフトウェアエンジニアとの協調を研究対象としています。そしてUXデザインのためのワークショップをデザイン・実践しています。

堀江研究室

研究室の主なデザイン対象は人々のコミュニケーションのためのアプリケーションソフトウェア、ゲーム、ワークショップです。近年の研究室の産学連携の取組みでは、「子育て中のパパを対象とした対話型ワークショップ『パパのびワークショップ』」のデザイン・実践、MR用ヘッドマウントディスプレイを利用した遊びをデザイン・開発をしています。

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