PROFILE
京都大学大学院を修了後、郷里の千葉県に戻り、1993年4月から電力中央研究所の研究員として勤務。2009年に名古屋大学で博士(工学)の学位を取得。2020年より国際原子力機関に外部専門家として参加している。2012年4月に東北大学大学院工学研究科の准教授に就任。2022年4月から本学の工学部都市マネジメント学科(現・ 都市工学課程)の教授として教鞭を執り、現在は工学部長も務める。
- 担当科目
- 地盤防災工学
- 地震工学
- 応用地盤工学
※教員の所属・役職は取材当時のものです。
THEME重要施設の安全を守るために
災害時の地盤を数値解析で予測
THEME重要施設の安全を守るために
災害時の地盤を数値解析で予測
地震や豪雨による地盤災害の被害を減らすため、土の挙動を数値モデルで予測、検証する研究に携わる河井先生。電力中央研究所での勤務を出発点に、原子力発電施設の安全に関わる研究や関連事業へ関わりを深め、国際原子力機関(IAEA)の外部専門家や原子力土木委員会の一員としても社会貢献しています。また、学生の教育や能力向上の機会創出にも努め、論理的に思考する素地や日本語の読解力を養う指導にも、強い信念を持って当たっています。

学生のやりがいを醸成しながら
社会で活躍できる人材を輩出
教職に就いたきっかけを教えてください。
電力中央研究所に勤務しているなか、将来の行き詰まりを感じていた時期がありました。ちょうどその頃、名古屋大学に社会人博士として在籍しており、頻繁に大学へ足を運んで学生と触れ合ううちに、楽しく元気に青春時代を謳歌している姿を見て、そんな将来有望な若者たちと関わるような仕事がしたいと思うようになり、教職への転職を決めました。
学生の指導で大切にしていることとは。
本学の学生に対しては、目の輝きを失わずに学生生活を全うし、卒業後、就職した先でも頑張ってくれるためには、どのような指導をすべきか考えています。学生には、本気で面白いと思って取り組める何かに出会って欲しいと願っていますし、いつも学生の意欲を高めるためにはどうしたらよいか思案しています。また、工学部長として、この少子化の時代に大学が生き残るためには、どのような戦略で臨んだらいいかという課題にも取り組んでいます。今年度のアクションプランとして、小林 正樹 学長は教育の質向上を強く打ち出していますが、私も指導を担当している学生たちに、基礎教育の徹底を図っているところです。

日本における原子力発電の安全規制と
推進を支える研究、次世代の教育に専心
どんな研究に取り組んでいますか。
電力中央研究所では、地盤工学の専門家として液状化や地震発生時の揺れ、斜面崩壊による原子力発電施設への被害に関する研究に注力していました。電力中央研究所を退所し、東北大学大学院工学研究科に移った際も、電力会社や原子力規制庁とのお付き合いは続き、原子力関連施設の地盤防災への関わりを続けてきました。本学に赴任しても本筋は変わらず、さらに国際原子力機関(IAEA)の外部専門家として依頼を受け、原子力発電所建設時の地盤問題に関わる技術指針の執筆や最新技術に関する資料の作成などに取り組んでいます。また、以前から電力会社の原子力土木部門とのお付き合いがあるので、学生の教育を目的とした原子力発電所施設内部や土木構造物の見学を実現させています。
原子力規制人材育成事業とは。
本学が原子力規制庁の補助金を受け、名古屋大学と東北大学、宇都宮大学と本学の4大学の研究室が連携し、自然現象への洞察力を養う人材教育を目的とした、実験や数値解析の場を共有する取り組みを主催しています。各大学で講習会を行なった後、それぞれの研究室が所有する実験装置の紹介や模型実験への参加、原子力発電所の見学などを実施しています。また、各大学の講義に原子力規制庁の専門家を講師として招き、日本における原子力利用の現状など正しい知識を学生たちに教えてもらっています。交流活動に主眼を置いてはいますが、高度な視点から地盤の災害の原因を理解し、原子力のリスク管理に資する人材を育成するプログラムとなっています。広く社会基盤インフラを支える企業や組織に進み、直接原子力事業に関わらない将来を選んでも、正しい原子力規制に関する知識と深い洞察力により、地震などが発生した際に適切な対応がとれる人材の育成を目指しています。
楽しく充実した人生を送るために
自分の頭で考えられる能力の向上を
教育者としての信念とは。
大学は答えを得るための場所ではなく、学びを経て能力を高めるために在ると考えています。他人が出した答えを求めても、何の意味もありません。この研究室の学生には、目的を明確にし、何のために課題へ取り組むのかを見定めるよう指導しています。私は授業中に、知識を教えてくれる道具として生成AIを使用することを推奨しています。しかし、自分の能力を上げたいのであれば、何も理解せずにAIの回答をレポートとして提出することは慎むべきです。AIが教えてくれる知識の説明は基本的に日本語だと思いますが、その日本語を正しく読む・書く能力が学生に不足していることを憂慮しています。働く際、仕事の指示や報告は日本語であり、それはどのような職業に就いても確実に必要になるし、在学中に勉強して内容を理解するための道具としても必須だからです。
河井先生にとっての「未来のエスキース」とは。
本学では、エスキースを“構想”の意味でも捉えていますが、私の人生を振り返ると、計画性とは全く無縁でした。進学も就職も流されるまま進んできたという反省があるので、その反面教師として学生に伝えたいのは、自分の人生設計を考えることは、どんな人生を楽しみたいかと同義であることです。設計する時点から逆算して、今、何を頑張っておけば、その後の楽しい人生につながるのかを、正しく判断して選択していく必要があります。だから、そもそも未来のエスキースを描くためには、自分の頭で考える力を向上させることが必要であると思っています。


COLUMN
わたしと
地盤工学
予想外の進路の先にある今
「自身の専門に興味があるか?」に「Yes」と即答できない。でも「地盤工学を仕事にして良かったか?」はYes。高校生に向かって「やりたいことは何ですか? 大学でそれを学びましょう!」と言うべき立場だが、高校時代やりたいことなどなく、受かりそうな学科というだけで土木工学を選んだ。入学後もさっぱり興味を持てず、何となく就職した研究所から、何となく大学へと転じて今に至る。
しかし、振り返ってみると、地盤工学は少ない情報から、正しい結論を導かなければならず、細かいことよりも本質が大事というのは性に合っていた。無理にやりたいことを探さないでも、人生なるようになるもので、目前のことに一生懸命に取り組む姿勢さえあれば、ある程度楽しい人生にはなっている。都市工学の関わる社会基盤整備は絶対必要で、就職先の幅も広く、流されて生きて来ても良い場所にハマったのかな?
少なくとも、今の自分は、明らかに高校・大学の頃の想像のはるか外側で、人生って面白いなと思う。

