PROFILE
1998年に早稲田大学で博士(工学)の学位を取得。1999年4月に建設省建築研究所第五研究部防煙研究室の研究員となり、2001年4月から国土交通省国土技術政策総合研究所都市研究部の研究官、主任研究官を歴任。2013年4月から独立行政法人建築研究所防火研究グループの主任研究員を務める。スウェーデン王国SPスウェーデン国立技術研究所客員研究員も経て、2017年7月に国立研究開発法人建築研究所防火研究グループ上席研究員となる。本学建築学部建築学科には2021年8月に教授として就任し、現在に至る。
- 担当科目
- 建築環境工学概論
- 都市環境
- 熱・空気環境
- 災害と建築
※教員の所属・役職は取材当時のものです。
THEME地域課題に取り組みながら
最善の防災まちづくりを
THEME地域課題に取り組みながら
最善の防災まちづくりを
国士交通省の研究所で、都市や建築の防火基準や都市計画手法に関する研究に携わってきた鍵屋先生。地方の過疎化といった社会の課題にも心を寄せながら当事者の声にも耳を傾け、伝統的な木造建築の街並みを守る防災計画に学生たちと取り組んでいます。また、身の回りのありふれた景色の中から、新たな研究の端緒となる興味の対象を見出し、自由な発想と技術的な可能性で裏付けて「かたち」にし、社会に向けて提案することを説いています。

震災火災の被害を繰り返さぬよう
都市や建築の防災研究に注力
研究所で防火対策に携わるきっかけとは。
学生の頃は、都市環境と建築に関わる分野で、ヒートアイランド現象や低炭素都市づくりといった環境対策をいかに都市計画に活かしていくかを研究していました。そして博士論文を取りまとめていた当時、阪神淡路大震災により広範囲で起きた火災の被害が強く印象に残っていたこともあり、防災的な観点でもいろいろ考察を深めたいと思ったのが、以後の方向性を決めるきっかけになりました。国土交通省の研究所でも都市火災に対応できる人材を求めていたこともあり、1999年から都市や建築の防火基準や都市計画手法に関する研究に携わり、その後木材利用促進や避難に関わる火災安全の基準づくりなどに取り組みました。
スウェーデンではどんなことを学びましたか。
スウェーデンをはじめとするヨーロッパ各国では、木造による中高層ビルの建設が盛んに行われていました。日本では火災による被害が多かったので、どうしてヨーロッパでは高層で木造のビルが建てられるのか不思議に思い、その実態や技術的な根拠を調べたいと思いました。そんな時、スウェーデン国立技術研究所客員研究員に招かれ、渡欧する機会が得られました。
現状の課題に綿密な考察を重ね
多くの気づきから最良の結論を導くために
鍵屋ゼミでの研究手法とは。
建築やまちづくりで日常の生活を安心で豊かにすることをテーマに、例えば超高齢社会の防火対策や避難安全性と両立させる防災計画・維持管理方法を扱っています。昨年夏は、宮城県栗原市花山地区を訪ねました。この地区は過疎化などにより空き家の数が目立っており、管理不全による火災発生が危ぶまれています。これは都市部でも近年、深刻な問題になっています。学生たちと大学のバスで現地に向い、実際に歩いて視察を行いました。さらにそこで、市の都市計画課の担当者や空き家問題に取り組んでいる団体スタッフなどにも聞き取りを行い、この地域が抱える課題や実情を知りました。地方の人口減に関する問題に、災害の危険がはらんでいる事実に気づきが得られ、当事者から生の声を聞くことの大切さを学んでもらえたと思っています。
研究テーマの見つけ方とは。
ゼミでは学生たちによく、自分たちの身近なことで少しでも関心をもてるものがあれば、それを大事にして研究テーマにしてみなさいと指導しています。日常の中で見過ごしがちな事象の中に、違和感や不便さを感じるならば、それを追求するべきです。つまらない、恥ずかしいと思うことはありません。そのような身近な違和感こそが、何か重要な問題につながるかもしれません。ゼミでは盛んなディスカッションを行い、研究テーマの検討を行なっています。例えば、大学のある八木山に電柱やマンホールがいくつあるのか調査に取り組んだことがありますが、これは、大震災などで身近な避難場所を知るための手掛かりになります。また、災害時を想定して自動運転車いすで建物内を避難する模擬実験も行い、介護ロボットに乗車していると通過しづらいドアや対向者とすれ違うのに困難な幅の通路があることを示すことができました。

の模擬実験


得難い本質にたどり着くために
考え得るあらゆるアプローチを
学生たちに求める姿勢とは。
物事の本質を見極めることは、決して容易いことではありません。社会人になれば、答えのない問題を解くような経験を何度も味わうでしょう。そんな時、自分に与えられた状況や条件を見つめ直し、どのような答えを導き出せばいいのか、しっかりと見定めることが必要になります。そのためにも、常に周りをしっかり見て考え、好奇心を絶やさないことが肝心です。机にしがみついて勉強しろとは言いません。私もどちらかと言えば真面目な方ではなかったので、学生だからこそ遊びやアルバイトなどいろいろな経験をしてほしいと思っています。外部からの情報や刺激が多いほど、気づきを得られるチャンスに恵まれるでしょう。
鍵屋先生にとっての「未来のエスキース」とは。
私にとって未来のエスキースとは「日常」です。ただ意識せずに過ごすだけでは、何も気づくことはできないので、身近な物事もちょっと視点を変えて考えてみましょう。そうすれば、いつもと違った景色を目にすることができるはずです。スマホでネット検索したり誰かに聞いたりすれば、何らかの答えが得られるかもしれません。そうして得た知識を紡いでいき、違った糸口を発見することができれば問題の本質にたどりつくことができるかもしれない。そんなプロセスこそ大切にしたいと考えています。

COLUMN
わたしと
愛犬
イヌは果たして「我思う」のか?
小型犬を飼い始めて6年が経ちました。お迎えした時は手のひらに乗る大きさでしたが、今では6キロ弱に成長しました。イヌはヒトの言葉、例えば、「まて」「おすわり」「さんぼ」を理解しますが、声の羅列である言葉をどのように概念理解しているのか観察しています。認知科学の演習のようですが、乳児が言語能力を獲得する過程にも通じるところがありそうです。人は名前という単語で自分を認識したり他者を識別しますが、犬は自分の名前を呼ばれると、どうやら自分のことではなく、その単語に反応した時に、飼い主が褒める時に出す周波数の高い声(いわゆる猫なで声)のように「心地よいもの」、ご褒美に貰えるおやつのような「美味しいもの」と認識しているようです。犬が散歩中ににおいを嗅ぎまわったり、マーキングしたりするのは人間のSNSと同じ情報収集・情報発信だと間いたとことがあり、興味が尽きません。ちなみに愛犬の名前は哲学者デカルトにちなんでルネです。

