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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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着任から一年

VOL.068 小野 桂介(都市マネジメント学科)

2022年8月に8年半にわたりお世話になりました建設コンサルタント会社を退職し、同年9月1日付で本学の都市マネジメント学科に講師として着任しました。建設コンサルタント業から大学教員への転職となり、業務内容や勤務形態などに大きな変化がありました。初年度ということで教育および研究に関する苦労も多いですが、同僚の先生方にも助けていただきどうにか1年を乗り切ることができました。まだまだ、研究者として目立った研究成果を上げることができておりませんが、現在の私の興味・関心について以下に紹介いたします。
大学着任以降、小中学生向けの防災教育について研究しています。この研究は、建設コンサルタントとして洪水ハザードマップを作成していた時期に着想があり、それ以降、地道に取り組んでいたトピックとなります。内容としては、「2次元の地図で公開・配布される浸水想定区域図を小中学生向けに分かりやすく可視化するにはどうすれば良いか」という問いに対して研究を進めています。

既往の2次元の浸水想定区域図(長町周辺)

現在は、国土交通省が整備・公開を進めるPLATEAUという3D都市データと小中学生に人気のビデオゲーム「Minecraft」を活用した防災教育コンテンツを開発しています。本ゲームは通称「マイクラ」と呼ばれ、Sandbox、いわゆるLEGOを仮想空間内で行うようなゲームとなります。私の研究においては、実際の地形や建物を1/1スケールでマイクラ内に再現した上で、大雨時の浸水範囲を重ね合わせ、プレイヤーが3D空間内で擬似的に浸水範囲や浸水深を体験できるコンテンツを開発しています。

仮想空間に再現された3次元の浸水想定区域図(JR郡山駅前)

本研究の最終目的は、本コンテンツの活用による小中学生の浸水ハザードの空間認知度の向上、ひいては自然災害に対する地域の防災・減災能力の向上です。目的の達成に向け、実際の教育現場において効果を検証すべく、市民向けイベントや出前講座に積極的に参画しています。直近では、7月16日に東北大学で開催された『学都「仙台・宮城」サイエンス・デイ2023』に出展し、90組を超えるご家族にPCを貸与し大雨時の浸水が再現されたワールドに触れていただきました。今後、国土交通省および自治体の教育委員会のご協力の下、東北地方の小中学校における出前講座が予定されています。効果検証結果がまとまり次第、論文として成果を報告したいと思います。

学都「仙台・宮城」サイエンス・デイ2023の講義風景

小野 桂介 講師

2009年3月に東北大学工学部建築・社会環境工学科を卒業後、日本学術振興会の特別研究員(DC1)を務めながら、2014年3月に東北大学で博士(工学)の学位を取得しました。同年4月に株式会社建設技研インターナショナルに就職し、開発途上国での国際協力を主な業務とする開発コンサルタントとして様々なプロジェクトに従事しました。本学には、2022年9月に工学部都市マネジメント学科の講師として就任し、現在に至ります。

小野研究室

本研究室では、豪雨により引き起こされる川の洪水や都市部の浸水、土砂災害などについて研究しています。また、近年の気候変動が水災害に与える影響評価に関する研究も行なっています。さらには、洪水ハザードマップとMinecraft(マインクラフト)を組み合わせて、小中学生向けの防災教育ツールの開発を実施しています。新しい研究室ですが、安全・安心な社会の実現に役立つ実践的な研究に取り組んでいます。また、他大学との連携プロジェクトや民間企業との共同研究にも力を入れています。

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