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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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失敗は成長の基

VOL.064 縄田 耕二(情報通信工学科)

失敗したなぁ、と最近思ったことは皆さん何でしょうか。年を取るにつれ責任が増し、失敗できなくなってきていないでしょうか。私もそうです。しかし、振り返ってみればこれまでに様々な失敗が自分を成長させてくれていることを感じます。
私は千葉大学大学院を卒業後、理化学研究所で研究員をし、本学に着任しました。研究をしていると国内外の学会で成果発表を行うことは研究者としての義務であり、アピールの場でもあります。そんな海外出張ではこれまでに様々な失敗を重ねてきました。その中から失敗談を少し紹介したいと思います。

これまでに出張した国を思い返してみると、韓国、アメリカ、中国、ドイツ、イタリア、イギリス、フランス、スペイン、トルコ、などいろいろ行きました。一番回数が多いのはアメリカ・カリフォルニアです。アメリカ出張のときは高い宿泊費のため同僚と同室にすることが多いのですが、これがよくトラブります。
ある時、予約を日本から公式サイトで取り、同室のためエクストラベッドを入れてほしいとコメントに書きました。それでも心配でエクストラベッドを入れてほしいとメールで連絡を取ると、OKの返事が来ます。これで一安心と思いますよね、しかし現地でチェックインすると「ないよ」と簡単に言われてしまいます。そのあとからのフロントとの交渉が本番です。入れてほしい、無理だよ、なんで、消防法で入れられない、なら部屋変えて、3人部屋に空きは無くて、、、、と長々と交渉しながら「失敗した」としょんぼりもしました。最後は結局予約した2+1人部屋に空きは無いので4人部屋になりました。この時以外にもエクストラベッドで度々トラブり、出国前にOKと返事を貰っていても油断してはいけないと学びました。


また、とある国際会議でドイツに一人で行ったときは、2月の寒空の下で危うく野宿ということもありました。会議会場が空港から遠い町だったので高速鉄道の乗り継ぎで向かっていましたが、列車に2時間ほど遅れが出て乗り継ぎを逃してしまいました。幸い次の列車に乗れたのですが、現地に到着したのはもう夜中。比較的小さな町で日曜だったこともあり、周りには誰もいません。知らない町でぐったりしながらスーツケースをガラガラと引っ張って歩きました。余談ですが石畳の道でスーツケースを引っ張るのって力がいるのですよね。さて、ようやくホテルの前に着いたのですけど扉が閉まっており、電気も消えていました。遅すぎる到着にフロントの人も帰ってしまったのです。入り口には張り紙があり、「部屋の鍵はポスト、暗証番号を教えるから電話して」と電話番号が書いてありました。さあ、困りました。海外SIMなんてなく電話を掛けられない。公衆電話なんてないし、夜中でしかも日曜なので空いているお店も見当たらない、「失敗した」このまま一晩どうしよう、、、、と途方に暮れました。どうすればいいか必死に考えながらウロウロと街を歩き回って、1件だけ明かりのついた中華料理店を見つけました。すぐに飛び込み事情を話して電話をお借りし、何とか暗証番号を知ることが出来たので、野宿を幸いにも免れました。夕飯として食べた暖かい炒飯の美味しさは忘れられませんね。


これらのほかにもいろいろな失敗を経験しましたが、どれも日本ではやらないような交渉でなんとか挽回してきました。挽回できたからこそ、笑い話にしたりこうしてリレーエッセイのネタにしたりできるのです。
失敗するのは人間ですから仕方ありません。と開き直って、大切なのは失敗の後、挽回するために必死に頭で考えて、そして行動できたかどうかだと思っています。なぜならこれらの失敗をしたあとはちょっぴり強くなった気がするのです。新型コロナウイルスによる様々な行動制限もなくなりつつあります。しばらく行っていなかった国際会議にもまた参加して、新たな失敗とちょっとの成長を重ねていきたいと思います。

縄田 耕二 准教授

専門はレーザー・非線形光学。主にレーザー光からテラヘルツ光への変換と応用を行っています。
千葉大学を卒業後、理化学研究所の研究員を経て、本学の准教授として勤務。理化学研究所の客員研究員も兼ねています。

縄田研究室

電磁波は、周波数(波長)によって電波、光波、X線など異なる特性と呼び方になります。周波数が0.3~10THz付近のテラヘルツ電磁波は、電波と光の特徴を併せ持つことから多くの応用が期待されています。例えば、人通りの多い場所でのセキュリティー検査やタイルなどの建材の裏に浸透した水を高精度に検査できます。本研究室では非線形光学という光の波長を変える原理を使って、テラヘルツ波の効率な発生や効果的な利用法を研究しています。

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