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スタートアップ

VOL.058 室山 真徳(電気電子工学科)

皆さん、スタートアップという言葉は聞いたことがあるでしょうか。最近は徐々に広まっているようですが、昔から言われている「ベンチャー」とほぼ同義です。ベンチャーは和製英語で海外では通用しないので注意して欲しいのですが、国内で説明する際は分かりやすいので今でも使うことがあります。しかし、私はスタートアップという言い方の方が好きです。スタートして、アップする運命にあることを名前が表しているからです。会社を立ち上げて、最初は一時的に企業価値がダウンすることがあるにしても、最終的には価値が指数関数的に上昇することが求められているのがスタートアップです。横軸が時間、縦軸が企業価値としたときにJのカーブのような成長曲線を描くことが期待されます。一方で通常の小企業は徐々に成長していく直線を描くことが多いです。ここで、Jのカーブに乗れない場合は会社を解散することになり、Jのカーブに乗れた場合は大企業になることが多いことも特徴となります。大多数は解散することになりますが、社会の成長のためにはこのスタートアップがたくさん出てくることが今望まれています。

さて、私はスタートアップを立上げています。まだまだか弱い存在ではありますが、スタートアップとしての会社を共同創業者として設立しました。立上げ時の人数が3人であり、今もそのままです。事業内容についてはここでは詳しくは述べませんが、ハードウェア系のスタートアップです。ながらく取り組んできた大学での研究の成果を社会に還元するために立ち上げたので大学発スタートアップとなります。Jのカーブを作るために大学での業務以外の時間を使って様々なことに取り組んでいますが、この話は機会があればご紹介したいと思います。

私は最近スタートアップが流行っているので立ち上げたわけではなく、20年以上前の私が修士課程の学生のときからスタートアップを考えていました。その話を少し紹介したいと思います。私は九州の福岡にある大学に通い研究を行っていましたが、多種多様な人との交流が多い研究室でもあり、その中にいくつものスタートアップを立上げていた人と知り合う機会がありました。その方はもともと日本の大手企業の研究開発職だったのですが、その部門の清算の際に独立して会社化されたとのことでした。内容はCAD(Computer Aided Design)用のツールであり、ソフトウェアの会社でした。今盛り上がっている半導体業界における設計用のCADツールです。半導体設計はたいへん高度な技術が必要でCADの利用が欠かせません。大規模なCADツールセットを利用すると毎年何億円もその利用代がかかることもあるくらいCADツールの価値は高いものです。その方が立ち上げられた会社は、最終的に最大手のアメリカの企業に買収されました。なお、スタートアップの成功にはおおきく2種類あり、IPO(株式上場)とMA(企業買収)がそれにあたります。その方は、なんとその後またスタートアップを立上げられました。結果的に何度もスタートアップを立上げられています。少なくとも2回は成功されています。

その方と話をする中でとても人生を楽しんでいる様子が印象に残りました。また、スタートアップのソフトウェア作成のお手伝いをしたりする中で、スタートアップは大変だけど楽しい仕事で夢があるという想いも持つことになりました。その後、博士課程のときにインターンシップとしてカリフォルニアにある富士通アメリカ研究所に4カ月滞在しましたが、そのときのカリフォルニアの雰囲気が大好きになりました。研究所はサニーベール(Sunnyvale)という場所にあったのですが、そこもいわゆるシリコンバレーの一角にあたります。何がよいかというと、とにかく天気がよいのです。人々も移民が多く、ひとあたりがよい人が多いためなんとかなるさという雰囲気があふれています。スタートアップのメッカである理由のひとつだと思いました。インターン期間中、いろいろなつてを使い、在籍していた大学のカリフォルニアオフィス、SVJEN(Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network)、JTPA(Japan Technology Professional Association)などの方々に会いに行き、シリコンバレーやスタートアップについてお話する機会を積極的に作りました。そのときお話したことは今でも私の中での羅針盤となっています。ベイエリア(シリコンバレーのある地域のこと)の自由な空気と最高の天気、高度な知性のぶつかりあう環境、フェアな環境にまた身を置きたいと思っています。

この体験を通じて、スタートアップを通じて人生を楽しく過ごし、世の中を変えていくことをやろうという想いを持つに至りました。我々が立ち上げたスタートアップはハードウェア系スタートアップであり、ソフトウェア系と比べていくぶんか特殊な特性がありますが、私のこれまでの経験を活かす形態であり、また確実に世の中を豊かにすることができると思って取り組んでいます。

大学の教員とスタートアップのどちらにも関わっている点を活かして、教育、研究、社会実装を進めていきます。日本が今後立ち直るためにはスタートアップを活用する以外にないと私は強く確信しています。皆さんにはスタートアップに興味を持ち、よりよく知ってもらいたいと思います。

室山 真徳 准教授

コアとなる専門技術は超集積システム。そのほかキーワードは集積回路設計、触覚センサ、マルチセンサ、次世代ロボット、物理センサの時系列データを用いた機械学習、次世代インタラクション。
九州大学を卒業後、九州大学の助手・助教を経て、東北大学の助教・准教授へ。その後、本学の准教授として勤務。東北大学兼務。株式会社レイセンスの共同創業者・取締役・最高技術責任者(CTO)兼務。博士課程時代に米国富士通研究所アメリカに4カ月インターン勤務し、東北大学時代に6カ月ベルギー王国IMECにて勤務した経験あり。

室山研究室

コア技術を活かした次世代ロボット・人間拡張技術の研究開発と社会実装を進めています。計算、記憶、通信などを行うLSIとセンシングやアクチュエーションを行うMEMSなどの半導体技術を用いた超集積システムを技術的・学術的な強みに置いており、特に東北大学時代から進めているオリジナルのMEMS-LSI集積化触覚センサネットワークシステムは世界的にみて高い競争力を持っています。今は人協働ロボット・遠隔ロボットの高度化、人へのウェアラブルセンサ設置による高精細な動作姿勢・力加減の取得、今までにない高い臨場感を持つVR/ARなどを目指して楽しく、また本気で研究開発を進めています。

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