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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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世界は小さくなった

VOL.054 佐々木 留美子(建築学科)

こんにちは。建築学科の佐々木です。リレーエッセイの執筆依頼がきて、何を書こうかと迷ったのですが、「日々考えていることや何気ない日常のできごと」などと依頼内容にありましたので、私が日々考えている「世の中はなんて便利になったのか。世界はここ十年で小さくなったな」と感じることについて書いていこうと思います。しばし、私の思い出話にお付き合いください。

まず、私は大学に進学する際、建築学科を志望して、今は建築学科で教員をしています。ですが、それほど建築に強い情熱があるというわけではありませんでした。ただ、趣味は写真を撮ることで、海外に行って異国情緒あふれる街並みを写真におさめるのが好きでした。
大学在学中には、イタリアやスペイン、タイ、トルコなど色々な地域を旅しました。その中でもイタリアでは、バックパックを背負って一人旅をした思い出の土地です。航空券を買って、宿は各地のユースホステルに泊まり、一人でイタリアを一周、3週間かけてまわりました。当時は海外で携帯電話やスマホは使えなかったので、現地の公衆電話から家族に無事の連絡を定期的にいれ、現地情報は地球の歩き方1冊のみ。イタリア語はなんとなく意味が分かるような語句もあるけれど、わからなければ周囲に聞くか、勘で進むか。頼るのは自分の決断力のみ。ですが、ジェノヴァ行きの電車に乗ったつもりがジュネーヴ行きだったといった失敗もありました。(ジェノヴァはイタリアの都市ですが、ジュネーヴはスイスにあります)

イタリアの街並み

同じイタリアでも、それぞれの地域がもともとは独立した小国だった時代もあり、例えば南北ではずいぶん違いがありました。街の特徴も地形によって異なり面白く、たくさんシャッターをきりました。現地で日本からきている学生(なぜか建築学科の学生が多かったですね)と友達になり、ヴェネチアでゴンドラに乗り合いする日本人を集めて、割り勘乗船などもしました。なんというか、原風景というか、懐かしい時代の思い出です。

ガレリア

あれから20年近くがたちました。今では海外の建築生産をテーマに研究をしていますので、今でも海外に行くことが非常に多くあります(もちろんコロナ禍で、ここ2年以上は渡航していないですが)。この20年近くで、海外での過ごし方はまるっきり変わりました。
まずはスマホが使える!日本でポケットWi-Fiを借りれば、日本の生活と同じように、海外でも自分のスマホでネットにアクセスできるわけです。ネットが使えるなら、可能性は最大限に広がったといえます。
例えば、地球の歩き方はほぼなくても動けます。レストランや観光情報も、その場で調べられるし、地図アプリがあれば、今どこにいるか、どの方向に移動しているかわかります。なんなら、検索すれば行き方も全て教えてくれるわけです。どこからどのバスに乗るか、それを逃したら次はいつバスが来るか。タクシーもアプリを使うと、乗車予約から支払いまでネット上で済ませることができるので、ぼったくられているかもといった心配も必要なしです。日本との連絡も、日本国内にいるときと何も変わりありません。街中やレストランのメニューにある英語表記ではない文字も、カメラ+翻訳機能で瞬時に意味が分かるようになりました。20年前には信じられないほど、本当に便利になったのです!

イタリアの街並み

私にとって海外の街というのは、しっかりと念入りに準備をしてもなお、不測の事態が起こるかもしれない、遠い遠い未知の世界でしたが、今は、ずいぶんと身近に感じられるようになりました。ともすれば、日本の少し離れた地方と変わらないような場所ともいえます。
建築の世界でも、海外とのオンラインの実務のやりとりも増えてきました。世界の大きさというのは、物理的には変わってないのだけれど、感覚的には小さくなったように思います。みなさんもぜひ、コロナが落ち着いた際には、ちょっとそこまで、海外の気になる土地を訪れて見聞を広めてはいかがでしょうか。

佐々木 留美子 講師

学位:博士(環境学)
専門:海外の建築構法・生産システムの研究
担当科目:住宅生産、建築生産、建築プロジェクトマネジメント

佐々木研究室

建築を生産する社会の仕組みを、国内外を対象として明らかにする研究室です。建築をつくりだす過程で関わる人々の役割やそれを決定づける要因、建築を取り巻く法制度や慣習など地域固有の社会システムを勉強してます。また、施工現場における技能教育にも取り組んでいます。

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