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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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新たな空間と人に出会うために

VOL.052 谷本 裕香子(生活デザイン学科)

小さいときから外で遊ぶのが大好きな子どもでした。

今でも一日家にいるという日はほぼありません。
休みの日にはよくどこかに出かけています。

気になるものがあれば見に行き、気になる人がいれば会いに行きます。

最近は関ヶ原古戦場を見に行きました。
東西・南北の主要な街道が交差する位置が戦いの場となったわけですが、このような一望できる場所に十万もの人が集結したとは思えないほど狭い場所でした。
付近にミュージアムもできていて、この場を一望したり、ここで起こった戦いをシミュレーションで見ることができます。この戦いについて、伝わっていることが少ないのか細かいことは分かりませんが、このとき人がどう動いたのかが時系列で理解できます。
昔そこに立った人と同じ景色(厳密には違いますが)を見て想像するのがとても好きです。

強い気持ちに動かされることもあり、それは私が研究を始めた8年ほど前、故京都大学教授 外山義先生の著書に出会い、作品をすべて見たいという気持ちになり、全国に散らばった施設をほぼ全て見に行きました。

さまざまな居住環境を体験することができましたが、とくに面白かったのは、施設長さんやスタッフさんとの会話です。
訪問したときにはいつも長居してしまいます。話をしているうちに、施設に対する本音やこの仕事での苦労、理想のケアなどなど、たくさんのことを聞くことができます。ときには、つながりのある人を紹介してくれたり、盛り上がって飲みにいくこともあります。
同じ興味、同じ視点を持っている人と出会えることがとても面白く、その時間を楽しんでいます。
これまで出会った施設は大切なつながりだと感じていますし、今後も大切に付き合っていきたいと思います。

また建物自体に感動することも多いです。印象深いのはテルメ・ヴァルスの温泉施設です。建築関係者ならだれもが知っているピーター・ズントーによる設計、スイスのクール地方にあります。
私は施設北東にあるクールという街からバスに乗りましたが、周囲の景色に期待感は高まるばかりでした。
やっと到着し、中に入ると今まで体験したことのない空間と音、光を感じることができました。
外部空間で横になることもでき、目の前に大自然を感じることができます。今でも思い出すとドキドキするくらい、感動の空間になっています。ぜひ他の人にも体験してほしいですし、共有したい場所です。
でもリラックスできたかというとそうでもないので、私はやはり日本の寝転び湯とか富士山を眺めながらのお湯が合っているのだと思います。

施設見学のアポイントを取りそびれたときには外から眺めたり、集合住宅だったりすると、入居者に声をかけてしまったりということもあります。オランダの高齢者住宅ではどうしても中に入りたくて玄関のところで誰か来るのを待っていて「すみませんー」と声をかけました。
私は悪人顔ではないのか、警戒されることなく、高齢夫婦が部屋に通してくれました。宙に浮くようなテラス部分に行けてとてもうれしくなりました。

それにしてもこれが高齢者住宅か?と思うと驚きますが、こんなところに住むかっこいい高齢者がいてほしい気もします。部屋の中もとても色鮮やかなインテリアになっていて、少し背筋を伸ばしたこんな老後もいいなあと思いました。

こんなことに感激しながら、人にたくさん親切にしてもらいながら、次はここに行きたい、などとスマホのメモ帳にどんどん場所を書き込んでいます。

この他にもたくさん紹介したいところはありますが、だらだらと長くなってしまうので
このくらいにしておこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

谷本 裕香子 講師

早稲田大学で学位を取得し、設計事務所・東洋大学助手を経て、2020年度に生活デザイン学科講師として着任いたしました。専門は福祉施設の建築計画・設計です。

谷本研究室

高齢者、障害者、子ども等、さまざまな立場の人々が積極的に参画できる社会が求められています。その実現のために、研究室では、福祉・ユニバーサルデザインの視点からのまちづくりと地域社会と繋がる建築空間のデザインプロセスや手法について探求しています。

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