東北工業大学

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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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とりあえずチャレンジしよう!

VOL.049 柴田 憲治(電気電子工学科)

こんにちは。電気電子工学科で教員をしている柴田と申します。学生の時代からずっと、様々な材料を対象にして、ナノメートル程度の小さな領域で起きている現象を調べて応用する研究をしています。世界の誰も知らない新しい機能を持った材料を作ったり、その性質を調べたりするためには、それに適した装置を自分で作る必要があることが多く、自分の手を動かして新しく物を作ることや、新しい発見に繋がることに挑戦するのが大好きです。このエッセイでは、最近の仕事とプライベートにおけるチャレンジについて紹介したいと思います。

まずは、今年になってから新しく取り組んでいる研究について少しだけ紹介させていただきます。私はナノテクノロジーという髪の毛の太さの1万分の1程度の小さな物を取り扱う技術を使って、新しい原理で動くコンピューターの部品を作製する研究をしています。良い性能を持つ部品を作るためには、1原子レベルで制御しながら色々な特徴を持つ材料を堆積させて、薄い膜を作る技術が必要になります。これを可能とする装置は企業から購入することが出来るのですが、一般に1台数千万円と非常に高価な上に、デザインが洗練され過ぎていて後から変更を加えることができないこともあります。今年になって、研究室では所属する学生に協力してもらいながら、原子レベルで厚さを制御しながら材料を堆積させる装置を安価に一から自作することに挑戦しています。はじめは壁に何度もぶつかって諦めかけたこともありましたが、失敗を繰り返すうちに少しずつノウハウが蓄えられていきます。現在では次第に良いものができるようになってきました。もう一踏ん張りだと思って学生と一緒に頑張っています。


研究室にある色々な部品をかき集めて組み上げた原子層堆積装置(上図)とガス流量制御系(下図)。手作りなので配線がグチャグチャですが、ちゃんと動きます。

良い装置が完成すれば、それを用いて新しい研究成果が得られるので、国内外の様々な都市で開催される学会に参加して成果を発表することになります。特に国際会議は世界中の頭脳が集まる中でベテランも若手も対等な立場で発表を行い交流します。その過程で新しい仲間やアイデアを得ることができる貴重な機会なので、いつも楽しみにしています。それまで頼りない印象だった学生も、学会に参加して世界中の研究者と交流した後に、一皮剥けてたくましく成長する姿を何度も見てきました。新しい実験にチャレンジして新しい成果を得ることと、それを取りまとめて発表するのは大変な作業ですが、毎日地道な努力を積み重ねる者にしか経験できない極上のご褒美といって良いかも知れません。(ちなみにトップの画像も、仕事で訪れたドイツ・フランス国境のストラスブールという町で撮影した有名なクリスマスマーケットの様子です。)

ミュンヘン大学(LMU Munich)物理学科からの招待により行ったセミナー発表

次に自宅でのプライベートなチャレンジについて記載させていただきます。自宅の近くには珍しい海産物を置いているスーパーマーケットが幾つかあるので、仕事帰りによく立ち寄ることがあります。刺身のお魚もよく買うのですが、大好きな食材が捌かれずに取れたままの姿で置いてあることも多く、食欲とともに挑戦心がかき立てられます。
中でも、特に気になっていたのが殻付きの生牡蠣で、ゴツゴツした殻に包まれた新鮮な牡蠣の姿に、(仕事帰りはいつも空腹なので)我慢ができなくなり、購入して自分で捌いて食べてみることにしました。

自分で捌いた牡蠣を生で食べる勇気がないので、いつも熱を加えて蒸し焼きにして食べています。捌き方の知識や専用の道具を持っていないので、インターネットで捌き方を調べて、家にあるものを使って殻を剥くことになります。初めて挑戦したときには、レンジでチンすれば殻は簡単に剥けるとのホームページの記事を見つけて試したところ、大部分の殻は開かずに、熱くなった牡蠣の殻を開けねばならなくなり、やけどしたり身がグチャグチャになったりして、大失敗でした。
研究同様、色々と試行錯誤した結果、最初に殻を剥いてからレンジで蒸し焼きにする方法が我が家には最も適しているとの結論に至りました。殻の端をハサミで切って(右上図)、隙間を作り、ナイフを隙間に差し込んで少しグリグリやると(左下図)、貝柱が切れて殻を開くことができます。ただし、このやり方は岩牡蠣の時は非常に大変でした。殻が端まで分厚いため、ハサミで切ってナイフを差し込む隙間を作るのが難しいので、今後、別の方法を探る必要があります。

その他にチャレンジした食材では、車エビとサザエが記憶に残っています。生きた車エビは行動が予測不能で突然とび跳ねるので、正直恐怖です。家族はキャーキャー言って楽しそうでしたが、仕事帰りで疲れた中、捌くのにかなりの労力を必要としてグッタリしました。一方、サザエについては家にある道具では蓋を開けるのがほぼ不可能で、10分以上の格闘の後、やっと1つ蓋を開けることができたのは良いのですが、中から予想外のグロテスクな物体が出てきて、一気に食欲が無くなったのを覚えています。

研究室で行っている研究でも、新しいことに挑戦するときは期待とともにワクワクするものですが、家でも、家族と一緒に味への期待でワクワクしながらチャレンジを楽しんでいます。

柴田 憲治 教授

専門は低次元電子物性。様々な材料のナノメートルの領域における電気的性質を調べて応用する研究を行っています。

柴田研究室

半導体や金属、絶縁体など様々な材料の薄膜形成から、微細加工によるデバイス作製、特性評価までに関する実験研究を行っています。

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