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大学で出来ること

VOL.012 松田 勝敬(情報通信工学科)

私も昔は高校生でした。その頃は親が敷いたレールに沿って,漠然と大学に進学しなければいけないと思っていました。ただ,自分が興味を持っていたコンピューターがどういう仕組みで動いているのか,大学にいくと教えてもらえるらしいなぁという思いも半分あって大学に入りました。大学3年生までは,私にとって大学のイメージは「高度な内容の勉強を教えてくれるところ」でした。皆さんも「大学行って勉強する」,「大学で勉強したことは・・・」と良く耳にするのではないでしょうか。

しかし,大学は勉強しているだけでは卒業できません。特に理系といわれる分野では,他のことをやらないと卒業できないのです。では,何をしないといけないのか。それは「研究」です。研究してその内容をまとめて卒業論文を完成させたり,研究の成果を発表しないと卒業できないことが多いのです。

私は「研究」とは,自分が興味を持ったことについて詳しい人になる,専門家になることだと考えています。自分の好きなことについて朝から晩まで考えて,新しい物をつくったり分からないことを解明したりするのです。勉強が得意でも,研究がうまく進まず,卒業するのに苦労をすることも大いにありうるのです。何かについて,たとえ端くれでも専門家にならないといけないのです。

私にとって研究はとても楽しいことでした。大学で研究ができるようになって,自分がやりたかったことはこれだ!と感じました。どれくらい楽しいかというと,今でも大学というところで働いているくらい楽しいのです。

大学で研究をするようになるのは,研究室という組織に所属してからというところが多いようです。研究室に所属できるのは,大学3年生の後半や4年生になってからで,本格的に研究をできるようになるのは,4年間の大学生活のうち最後の一年くらいということになります。しかも就職活動の時期も重なると,落ち着いて研究に取り組めるのは就職先が決まってからになってしまいます。

情報通信の分野の話題になりますが,最近皆さんも人工知能の話題を良く耳にするようになったと思います。先月(2016年3月)上旬には,AlphaGoという囲碁の人工知能が今世界一囲碁が強いという人に4勝1敗で勝利するという,画期的な出来事がありました。この対局が行われる前まで,ほんの一ヶ月ちょっと前までは「囲碁はチェスや将棋よりも難しいので,コンピューターが人間に勝てるようになるには,まだ10年かかる」と多くの専門家は考えていました。それがつい先月,人間のチャンピオンをコンピューターが負かしてしまったのです。他にも自動車の自動運転では,12年前の自動操縦の車のレースでは完走できた車が一台もなかったのに,今では人工知能を使い実際に道路を走る実験も進められている程です。あと15年くらいすると,運転手が要らない自動車が市販されると考えられています。これも囲碁のように,予想よりもっと早く実現するかもしれません。人工知能の分野では,今まさに歴史に残るような急激な進歩がみられ,これまでコンピューターにはできそうもなかったことが,人間と同じくらいの性能でどんどん出来るようになってきているのです。これから色々な分野で人工知能が使われるようになり,世の中のいろいろな事が大きく変わっていくはずです。私は人工知能の専門家ではありませんが,私が研究していることにも人工知能を活用することにより,いろいろな問題となっていたことが解決できるようになるでしょう。

大学にいれば,最近の人工知能で使われているニューラルネットについて,関係する分野の先生が簡単に説明してくれるかも知れません。もし,人工知能やニューラルネットの講義を受けていれば,さらに詳しくDeep Learningの仕組みなどを説明してくれるはずです。その分野の研究をやっている研究室に入れば,卒業研究で自分自身が研究者の一員として関われることができるでしょう。もしかしたら,世界的に有名な博士から,研究の指導をしてもらえるかもしれません。

研究が面白いと感じたら,大学院に進むのもいいでしょう(図1)。大学院にいけば,研究ができる時間が長くなるだけでなく,より深く関わることができます。大学や企業などから研究者が集まる,「学会」という場に出席して,専門家の最新の研究成果や説明を直接聞くことができます(図2)。自分の成果を発表し,著名な研究者の人たちと意見交換する機会もあるかもしれません。

図1 工学部卒業生の進路(文部科学省 平成27年度学校基本調査より)

どれくらいの人が大学院にいくのでしょう。

日々起こっている新しい発見,発明も,関心のない人にとっては,なんてことはない,テレビや新聞で取り上げられたニュースの一つに過ぎないかもしれません。もしかしたら,歴史の大きな転換点に立ち会っていたはずなのに,気付かず過ぎ去ってしまっているかもしれません。でも,もしなぜかほんの少し気になってそのニュースに注目したならば。さらに興味をもってネットや本で詳しく調べたりしてみたら。子供の頃に「しょうらいロボットをつくるひとになりたい」と作文に書いて夢をふくらませてみたりしたことがあったならば・・・。

大学にはそのような小さな興味の先に続く研究者,専門家になるための入り口としての役割があります。皆さんの子供の頃からの夢を叶えることのお手伝いが少しでもできたらいいなぁ,と思いながら大学の先生をやっています。

おわり

図2 学会で自分の研究成果を発表する大学院生
研究者に目覚めた彼のお手伝いはできたのでしょうか。
気づく→変わるを参照

松田 勝敬 准教授

1995年宇都宮大学工学部電気電子工学科卒業。宇都宮大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。宇都宮大学総合情報処理センター勤務を経て,現職。主な研究分野は,情報ネットワークに関する研究・開発。担当科目は,情報リテラシー,情報セキュリティ,情報通信工学実験IIIほか。

松田研究室

インターネットで操作できるラジコンなど,画面の中だけでなく画面の外でもインターネットが使えるシステムを研究・開発しています。実際に使えるところまでシステムを作ることを目的としており,研究成果のシステムを授業で実際に使っていたり,製品化されたりしています。

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