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※教員の所属・役職及び学生の学部・学科・学年は取材当時のものです。

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興味と仕事

VOL.005 佐藤 篤(環境エネルギー学科)

みなさん、こんにちは。環境エネルギー学科の佐藤 篤です。私は、電磁気学や電気回路などの電気系科目、そして、アルゴリズムなどの情報系科目を教えています。専門はレーザー工学で、環境計測やエネルギー生成に応用することを目的としたレーザー光源の研究をしています。

私の研究では、レーザー装置を作ることが主な仕事になります。もちろん、研究なので、誰かに作れと言われて作っているわけではなく、自分で興味があるから作っているわけです。実験をしていると時々、「自分はどうして、レーザーが好きなんだろう?」と思うことがあります。

過去を振り返ると、色々と思い当たる節があります。

小学生から中学生ぐらいまでは、とにかく、ロボットのアニメが大好きでした。挙げるときりがないくらいたくさんありますが、やはり、ガンダム、マクロスあたりが強く印象に残っています。ただ、ロボット自体よりも、武器として出てくるビームに一番興味がありました。敵を倒すとき、ミサイルで倒すとちょっとテンションが下がり、ビームで倒すとテンションが上がる。当時から、ビームってかっこいいなと思っていました。ガンダムやマクロスのプラモデルも、数えきれないぐらい作りました。とにかく、組み立てることが大好きで、いつも何時間も没頭していました。

高校生になると、アニメからは卒業し、オーディオにハマりました。ちょうど、アナログからデジタルへの移行期だったので、音楽の記録媒体はレコードからCDに、デジタルオーディオ機器間の接続は電気ケーブルから光ファイバーに変わっていきました。ノイズとの戦いだったアナログ時代、あのノイズのないデジタル技術の登場は衝撃的で、「光って、すごい!」と思いました。(今考えると、CDのノイズが少ないのは、光だからではなく、信号がデジタル化されたからですが。)

いまだに手放せないデジタルプリアンプ(さて、何をする装置でしょう?)

当時のオーディオマニアの間では、FMレコパルという雑誌が有名でした。オーディオの新製品の紹介や色々なメーカーの製品の性能比較などが載っていましたが、それよりも、この雑誌に載っている漫画に興味を持ちました。この漫画は、1話完結の話なのですが、毎回、一つのオーディオ機器が取り上げられ、それを開発するまでの技術者の活躍が書かれていました。これがあまりにもかっこよく、技術者という職業への憧れが芽生えました。

大学4年生のときに、卒業研修でレーザーと出会いました。ここで、手に当たると火傷するほどの出力のレーザーを動かしているうちに、すっかり忘れていたビームのかっこよさを思い出しました。プラモデルを作っていた時のモノづくりの楽しさも思い出しましたが、成功するかどうかわからない実験のドキドキ感と、部品も自作するという楽しさがあり、その面白さはプラモデルの比ではありませんでした。

 

レーザーの組み立て作業

簡単にはレーザーが動かないところも、私からすると、まさにオーディオマニア時代に憧れた、技術とアイデアで問題を乗りこえていく、あのストーリーそのものです。

暗室でのレーザー実験のようす

こんな感じで現在に至るわけですが、ただ、そもそもなぜビームがかっこいいと思うのかと聞かれると、うまく説明できません。これはもう性格や体質などと同じで、生まれ持った自分の個性というしかありません。私には、娘が2人いますが、同じ環境で同じように育てても、興味を持つ物が異なり、性格も違います。娘たちをみて、人間って、「興味を持つ物」と「興味を持たない物」が生まれたときからある程度、決まっているのだと思いました。あとは、誰でもいくつか持っているであろう「興味を持つ物」に出会うかどうかです。私の場合、ビームや光は、「興味を持つ物」の一つだったわけで、たまたまですが、それを知るきっかけに色々な形で出会い、最後にレーザーですべてが結びついたようです。

もちろん、他にもレーザーには関係はないけれど興味を持った物はたくさんあり、逆に、触れてはみたものの興味を持てなかった物も多くあります。ただそれらはすべて、今の仕事にたどり着くために必要不可欠な有意義な無駄だったわけで、また仕事以外の部分で役に立っていることもいくつもあります。

さて、今、工学部の教員として授業や研究をしていて、学生さんたちは工学あるいは技術というものに胸が躍るほどの興味を持っているのだろうか?と思うことがあります。

きっと、人それぞれ、なぜかわからないけど興味があるものがあって、大学のようにたくさんの科目を勉強する場所では、それに出会う、あるいは近づくことがあるはずです。

ぜひ、高校生のみなさんも大学生のみなさんも、まだ選択肢は広いので、今のうちに多くの物に触れながら、自分の個性に合った分野や職業に進んでもらえたらと思っています。

もしそれがビームなら・・・・

 

いいの、ありますよ、佐藤研究室に。

 

佐藤 篤

環境計測分野及びエネルギー分野へのレーザー技術の応用に関する研究

佐藤篤研究室

レーザー装置を送信機として使ったレーダー(=レーザーレーダー)を用いると、温室効果ガスや風向・風速、植生分布などを高精度に観測できるようになります。しかし、ここで必要となるレーザーは波長や出力などが特殊なので、市販されておらず、誰かが開発しなければいけません。佐藤研究室では、環境計測に必要な赤外波長領域の高出力レーザーの研究をしています。また、最近、この環境計測用レーザーの技術がエネルギー生成にも応用できるのではないかと考えており、新たにエネルギー分野への展開に挑戦しています。

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