
サンフランシスコ・ベイエリアとヨセミテを旅して
VOL.082 田河 育也(電気電子工学課程)
少し前の話になりますが、家族を連れてアメリカのサンフランシスコ・ベイエリアとヨセミテ国立公園を旅しました。実はこれ、もう10年前のこと。最近の話ではありません。
ベイエリアとは、サンフランシスコ湾岸一帯を指します。一般には「シリコンバレー」とも呼ばれますが、現地の人々は親しみを込めて「ベイエリア」と呼ぶのが普通です。今回の旅の目的は、私がかつて勤務していたウェスタンデジタルの本拠地を家族に見せたかったこと、そして東北工大への異動を前に、知人との再会を兼ね、体力と気力のあるうちに訪れておきたかったことにあります。加えて、以前から行ってみたかったヨセミテにも足を延ばすことにしました。
サンフランシスコ空港に到着後、レンタカーを借りました。当時はハーツレンタカーのNo.1クラブ・ゴールド会員だったため、手続き不要で駐車場に用意された車にそのまま乗ることができました。アメリカの高速道路は道幅が広く、運転はとても快適です。掲載した写真は帰路に空港近くで撮影したもので、上空には怪しい飛行物体(!?)が写っています。サンフランシスコ空港の看板が見えますが、ここではなく、次のレンタカー返却の看板で降ります。初めての人がつい間違える地点で、ここで降りてしまうと面倒なことになります。車線が非常に多く、看板も多数あるため、交差点の信号も含め、慣れないと戸惑うことが多いのです。

フリーウェイ101号
高速道路からダウンタウンに入ると車線は減り、曲がりくねった道も増えますが、首都高で鍛えられた日本人にとっては、それほどの苦労ではありません。案内標識を見落とすと面倒なことになる点も首都高と似ています。
まず向かったのはスタンフォード大学。子どもにも見せたかったため、立ち寄りました。広大で立派なキャンパスですが、正直なところ、歩くばかりで見どころはあまり感じられませんでした。

スタンフォード大学
その後、キャンベルという町にあるホテル「タウンプレース・スイーツ」へ。いわゆる高級モーテルで、部屋単位で料金が設定されているため、家族連れには非常に便利です。
続いて、かつて勤務していた工場を訪れました。ウェスタンデジタルの前身はHGST、さらにその前はIBMです。そのため敷地は非常に広く、果樹園や池、さらにはカナダガン(ギース)が巣を作っているほどでした。驚くべきことに、当時は社員の家族であれば誰でも敷地内に入ることができ、守衛所で一人がバッジを見せればOKという、いかにもアメリカらしい大らかさでした。日本にあるHGSTの工場では年に一度「ファミリー・サンクスデー」が催されていましたが、サンノゼ工場では「一年中ファミリー・サンクスだ」と、元上司が笑っていたのを思い出します。ただ、最近はゲートチェックが厳しくなってきたようです。
昼食は私のお気に入り、ベトナム料理の「フォー」のお店へ。シルバークリーク・マーケットプレイスにある「フォー No.1 ヌードルハウス」は、ランチタイムにはすぐに満席になる人気店です。私はいつも、たっぷりのパクチーをちぎって加えるのが定番。イースト・サンノゼと呼ばれるこの地域にはベトナム料理店が数多くありますが、私にとってはこの店が一番です。

フォー
その後、旧知の上司の家や、まるで農場のような敷地に馬を飼っている現地同僚の家などを訪ねましたが、その話はここでは省略します。
さて、いよいよヨセミテ国立公園へ。車で約4時間の道のりです。私には少し長く感じましたが、アメリカでは「たったの4時間」という感覚のようです。とはいえ、道幅が広いためか、不思議と疲れは感じません。
ヨセミテへは大きく3つのルートがありますが、私たちは中央ルートを選びました。宿泊予定のホテル「ヨセミテ・ビュー・ロッジ」へ最も便利だったためです。本当は園内のホテルに泊まりたかったのですが、夏休みのシーズンは1年前から満室になるようで、断念。このロッジも予約直後に満室となったため、運が良かったと言えるでしょう。
ヨセミテは非常に心地よい場所ですが、観光客が多いわりに駐車場が少なく、結局はかなり歩き回ることになります。ときには山道を登ることもあり、ハイキングというよりも登山です。それでも、駐車スペースを確保すれば(そこがまず難関ですが)、1時間も歩かずに「タフト・ポイント」に到着できます。まさにヨセミテならではの絶景が広がっています。

ヨセミテのタフトポイント
ヨセミテに限らず、アメリカでは至るところでリスに出会います。スタンフォード大学にもいました。アメリカサイズの大きなリスには驚かされますが、人懐っこく、とても可愛らしいです。

リス
ヨセミテを後にして、サンフランシスコ市内へ戻ります。家族が熟睡する中、私は一人、夜道を黙々と運転しました。宿泊先は「インターコンチネンタル」。名前こそ立派ですが、これまでのホテルと比べて部屋はかなり狭く、駐車場もなかったため、近隣の有料駐車場を探すことになりました。都会なので、これはやむを得ません。
サンフランシスコの街は自転車で巡りました。レンタル自転車店が至るところにあり、気軽に借りられます。ゴールデンゲート・ブリッジを渡り、サウサリートのフェリーターミナルを目指して走りました。風は心地よく、最高の気分……のはずが、真夏にもかかわらず霧が立ち込め、非常に寒くて、家族には不評でした。

ゴールデンゲートブリッジ
サウサリートではフェリーを待つ人で混雑していましたが、なんとか自転車ごと乗船し、サンフランシスコのフェリーターミナルまで戻りました。途中、有名なアルカトラズ島も間近に見えましたが、映画を知らない子どもたちにはあまり響かなかったようです。その後、フィッシャーマンズ・ワーフへ向かい、名物のクラムチャウダーをいただきました。味はもちろん絶品ですが、とにかく量が多い! アメリカでは料理のボリュームが、レストラン選びの重要な要素の一つだと聞いたことがあります。

クラムチャウダー
こうして旅は終わり、私たちは深夜発の便で日本へ帰国しました。次の機会には、「ロンドンとコッツウォルズを旅して」というエッセイをお届けできればと思っています。

田河 育也 教授
本学着任まえはハードディスク業界大手のウェスタンデジタルという外資系民間会社に勤務しておりました。米国サンホゼに本社を置いているため、米国はもとより、工場があるアジアの国々をまわって、組織を円滑に運営する仕事をしていました。多くの大学との関係強化も仕事の一つでした。国も文化も異なる人々の間ではコミュニケーションが非常に重要でしたが、同じことがここ大学でも言えると思います。学生と会話するだけでなく様々なイベントを通してコミュニケーションを深め、共に成長していきたいと思います。

磁気記録工学研究室
現代は「情報社会」と呼ばれ、インターネットの普及によって、通信、娯楽、ビジネスなど、私たちの暮らしはとても便利になりました。今後は、AI(人工知能)やスマートシティ、自動運転車といった新しい技術が広がることで、扱うデータの量がさらに増えていくと考えられています。そのため、データを効率よく記録・保存する情報ストレージの重要性は、これからますます高まっていきます。情報を保存する装置としてよく知られているのが、「ハードディスクドライブ(HDD)」です。HDDは、パソコンやHDDレコーダーに使われているだけでなく、現在ではデータセンターの中心的な装置となっています。このHDDの性能は、仙台で発明された「垂直磁気記録技術」と「トンネル磁気抵抗センサー(TMR)」によって大きく進歩しました。私たちは、より高性能なHDDを実現するために、「マイクロ波アシスト記録」や「熱アシストドット磁気記録」といった、次世代の記録技術の研究を進めています。