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Cross Talk

学部長座談会

未来のエスキースを描く

創立60周年を記念し、工学部、建築学部、ライフデザイン学部の学部長に、各学部の取り組みや未来に向けてめざすもの、学生や卒業生、社会へのメッセージを語っていただきました。

東北工業大学には工学部、建築学部、ライフデザイン学部の3学部があります。各学部長に、それぞれの特色、学生や卒業生たちの活躍、社会との関わりなどを熱く語っていただきました。 (進行役=小林正樹副学長)

東北工業大学
副学長

小林 正樹

東北工業大学
工学部長

工藤 栄亮

東北工業大学
副学長・建築学部長

石井 敏

東北工業大学
ライフデザイン学部長

小祝 慶紀

変革の時代をリードする、
さまざまな取り組み

―今日はざっくばらんに、そして進路選択を考える高校生や保護者の皆さん、採用や様々な連携を考える企業や公共団体の皆さんに、東北工業大学についてわかりやすくイメージしてもらえるような座談会にしたいと思います。トップバッターは工学部お願いします。

工藤
まず、工学とは何かというと、「人の生活を豊かにする学問」です。そして、本学の建学の精神が「わが国、特に東北地方の産業界で指導的役割を担う高度な技術者を養成する」となっています。工学部は地域の発展に不可欠な学部といえますし、開学当初からの学部で60周年を迎えました。60年も経つと社会も変わり、AIやDXとか、昔なら技術用語だった言葉が社会一般で使われる言葉になっています。
工学は「人の生活を豊かにする学問」であり、そのためには自分の専門外の分野にも目配りできる技術者が求められます。そうした変革に対応することが、2025年に改組し、課程制に移行する意義です。課程制への移行は北海道・東北地区で初の試み。先陣を切って変えていこうという意気込みを持っています。

―1964年の開学当初に設置されたのは工学部の電子工学科と通信工学科。電子工学は当時花形と言いますか、他の大学にもないような先進的な学科でした。スプートニクショック(旧ソ連が1957年、人類初の人工衛星打ち上げに成功し、世界に衝撃を与えた出来事)、科学技術の革新の中で日本が世界に後れを取ってはならないという、そのための最先端技術が電子工学であったわけです。科学技術が世の中のあらゆる仕組みを変えるという意味では、今また、当時に匹敵するような変革期を迎えているようにも思います。

工藤
そうですね。ChatGPTは文系の方も使いこなし、作業の効率化が図れますし、AIの代替によってなくなる職業もあるという話題があるくらい、社会は変わろうとしています。本学でもAIに対する教育に力を入れ、初年次から共通科目として人工知能総論を設けるなど、工学部だけではなく全学的にAI教育、それからグリーンテクノロジー教育も行っています。

―建築学部お願いします。

石井
建築学部ができたのは2020年。前身は工学部建築学科です。お話のあった電子、通信に次ぐ3番目の学科として1966年に設置されました。当時は東北・北海道に建築を学べる私立大学がありませんでしたので、学会や官界から非常に強い要請があって本学に設置された経緯があります。学部設置は2010年ごろから議論を重ねました。当時は建築を学部にしている大学はなかったんですが、本学科は教員や研究・教育体制が充実していることと、建築は工学だけでなくデザイン、歴史、環境などの分野まで幅広く総合的に学ぶ学問であることから、総合的に学問を発展させ、また本学を3学部体制にしようとなりました。
現在(2024年4月)、建築学部は全国に12大学あります。本学は全国6番目の建築学部として、また東北・北海道で唯一の建築学部になっています。建築学部は1学部1学科。学びの内容からすると、複数の学科に分けられるくらいの分野と規模がありますが、あえて1学科にして入学後に幅広く学んで、自分の適性や指向を探していけるカリキュラムにしています。学生自身が4年間かけて自分の適性を探し、進路を決めていける、そんな学びの形を取っています。特色としては、総合的に建築学を学べること、東北の地で東北の課題や震災を経た地理的な環境や経験、そういったことも交えて学ぶことに価値があると思っています。

―昨年度ちょうど4年を迎えました。工学部時代と、建築学部になってからを比べると、学生や社会からの見られ方は変わりましたか。

石井
入学生が工業高校3割、普通高校7割という状況はほぼ変わりませんが、普通高校の文系志向の学生や女子学生が多くなっています。かつては工学としての建築が中心でエンジニアリングに軸があり、いわば少し硬い印象もありましたが、今はそれに加えて、デザイン・計画の分野も充実し、少しやわらかいというか、建築学を総合的に感じることが出来る形となりました。学生が将来めざす仕事の志向もインテリアや住宅といった領域まで広がりを持つようになりました。社会や卒業生の受け止めも、新しい学部ではありますが、60年近い歴史と9000人弱の卒業生を出している建築学科なので、さらに発展している姿を見てくださって、以前にも増して強く応援し、人材輩出に期待してくださっている点は確かですね。社会との距離がさらに一歩近づいたと感じます。

―ライフデザイン学部は2008年にできて、まだ若い学部ですが、経緯と歩みを含めてお話しいただけますか。

小祝
ライフデザイン学部の源流をたどっていくと、現在ある生活デザイン学科と産業デザイン学科の前身として工学部にあった工業意匠学科が発展的に学部化した経緯があります。ですので学部としては16年ですが、実は歴史が古く、卒業生も多く活躍しています。一番新しい学科はライフデザイン学部発足時にできた経営コミュニケーション学科で、経済、経営、コミュニケーション学を主体とする文系学科です。16年間の卒業生は約1500人おり、各方面で活躍しています。
設立の経緯としては、工業意匠というと工業機械をデザインするイメージになってしまうんですが、東北から有為の人材を育てるんだというときに、これまでの工業意匠だけではなく地域をデザインするという思いがありました。モノづくりの観点からも、工業製品をデザインして作ることに加え、経済・経営系の学科をそろえることで、生み出されたモノが市場、社会生活の中で、どう使われていくのかまでを考える学部にしていこうと、そんな思いが込められています。いま考えると工業大学に経済・経営系の学科を作ったのは先進的だと思います。総合大学の経済・経営系学科の対象が「ヒト・モノ・カネ」であるなら、工業大学ではモノづくりから地域や市場までを見渡し、「ヒト・モノ・コト」を対象とする、そんな違いがありますね。

―学問としてのライフデザイン学とは、一言でいえば何なのでしょう。

小祝
「社会を循環させる」ことでしょう。工業系で培ったものを受け止め、社会に受け入れられる仕組みを作っていく。ゆりかごから墓場までという言葉がありますが、まさに、そういう仕組みを考えるのがライフデザインと言えます。