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宮城 全学長通信バックナンバー

第33回:研究を推進させる力

2015.11.19

 レーザ歯科治療装置用のファイバ(*1)は私の研究成果の一つであるが、現在、歯科から医療用にその範囲を広げつつある。内径が1mm以下、長さが2m程度の柔軟性のあるガラス細管が基本で、細管の内部に薄い銀の膜が形成され、1μm以下の厚さが精密に制御された誘電体膜がコートされた構造になっている。レーザ光はパイプの壁面で反射を繰り返し中空部を伝わっていくので、「中空ファイバ」と呼ばれている。波長が1μm程度の光用の通信用石英光ファイバでは伝送できない、主に医療用でEr:YAGレーザ(波長2.94μm)あるいは炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)の強力な光を柔軟に伝送できるのが特徴である。このような構造を持つ中空ファイバを発明したこと、そして安価な製作技術を開発したのがオリジナリティーを発揮した点であるが、実用製品として世の中に役立つようになるまでには、多くの学部学生、大学院学生、教職員、そして熱意ある企業開発者の力によっている。

 発明のきっかけは、学部学生の卒業論文の研究に付随した成果に、種々の工夫を加え「どんな波長を持つ光(電磁波)でも、小さな損失で伝送可能」な中空ファイバを実現できるという成果を得ることができたことであった。1978年頃のことで、私の興味は、通信用光ファイバの理論的研究から、従来伝送が難しいと思われた波長帯での電磁波伝送、中でもターゲットは医療用のレーザメスに移っていた。結果を学会で発表した時、実用的な構造についての疑念がコメントとしてあった。そのことを受け、真剣に実用構造を考え始めた。成果を期待しないまま、これも4年生の卒業論文のテーマとして、実用化のための理論的課題を与えた。これは行けそうだという結果を得たので、今までの理論的な研究スタイルを一転し、その後、中空ファイバ実現のための製作技術の研究を主に行った。

人に役立つものを作ろうという思いを持って実用化研究を推進した強い意志は勿論、私自身にあった。しかし、学部学生、あるいは大学院生の地味な研究成果がどんなにかその推進力を加速したか、計り知れないものがある。学生・院生に期待することは、与えられたテーマに対し、真面目に、真剣に取り組むことである。事実の一つ一つの積み重ねがある日、突然大きな飛躍のきっかけになる。知識が乏しく成果を十分は理解できないことがあるかもしれないが、それはまた別問題である。卒業研究でそろそろ佳境に入る頃であるこの季節に自分の経験を書いてみた。 
*1 http://www.morita.com/global/cms/website.php?id=/jp/products/dental/newfilename/evo2.htm

                              平成27年11月19日 東北工業大学 学長 宮城光信

 

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最終更新日 2018年9月13日