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宮城 全学長通信バックナンバー

第30回:あなたは何に視点を置くのか

2015.8.19

 古い話になりますが、2005年1月8日の朝日新聞「私の視点」にビル・ゲイツ(当時、米マイクロソフト会長)とボノ(ロックバンド「U2」ボーカリスト)が共同で執筆した「私の視点」を読んだ時に思ったことを述べます。私はその発想・考え方に驚愕し、その感動が今でも心に残っています。そして私もこのような発想・考え方を根底に持ち、事に対処していかなければならない、と思うようになりました。

 朝日新聞「私の視点」は
――文明の姿がガラリと変わる瞬間が歴史にはある。それは、人々がもはや現状を受け入れなくなり、それを壊す勢いが十分に高まった時だ。奴隷制度の廃止の時がそうだった。ベルリンの壁の崩壊やアパルトヘイトの終結も同じだ。―――
で始まっています。この「私の視点」の中で、ビル・ゲイツとボノは「貧しい人々」、「貧しい国々」に対し、先進国の指導者の持つべき、見識と決断力について述べています。具体的には次の4項目です:
• 迅速に供出できる効果的な対外援助の額を倍増する
• 貧困国の債務を帳消しにする
• 不公正な貿易ルールを変え、貧困国が自立できる道を作る
• HIV(エイズウイルス)ワクチンの開発を協力して推進する組織への資金提供
これらの項目は一見、先進国に極めて高コストを要求しているように見えます。しかし、高コストと考えるのは、援助していない現状と援助にかかる費用を単純比較した場合の費用差をコストと考えているのであって、ひとに対する投資が何倍にもなって帰ってくるということを考慮しない考え方であると思います。

 国の指導者でなければ、対外援助、貧困国の債務の帳消し、貿易ルールの変更、あるいはHIVウイルスワクチン開発組織への資金提供などは出来ないでしょう。貧困国にとって、これまで受けてきた債務を返還することは至難の業であり、永久にできないことかもしれません。その時、債務を帳消しにするという宣言はどれほどありがたいことでしょうか、その国を担っていく若人にどれほど希望を持たせることになるでしょうか、計り知れないものがあると思います。

 ビル・ゲイツとボノは、貧困問題に対して国の指導者がとるべき見識と決断力について述べているのでありますが、国の指導的立場にはない我々もまた、弱い者の味方になり、ありきたりの規則に従うばかりではなく、常識・規則を越え人間愛に基づいた見識と決断力を持つことが必要であると思います。

 この見識と決断力に関連し、最近、私の心を捉えたものに、山田洋次監督の映画「学校」でも取り上げられていた、「夜間中学」の問題があります。これは中学を卒業していな人のためのものです。夜間中学が初めて開設された当時、文部省は開設に消極的であったと聞いています。

 しかし、文部科学省は時代の趨勢を反映し、一歩進んで、本年7月30日に、不登校などで十分な教育を受けられずに中学校を卒業したひとが、義務教育の未修了者を対象にした「夜間中学」への入学を希望した場合、できる限り入学を認めるよう全国の教育委員会に通知した、ということです。私の想像の域ではありますが、これまでは一度、中学校を卒業した人を再び義務教育の学校に入学させるということは考えられなかったのではないでしょうか。あるいはまた、必要性があってもそれを頑なに拒んでいたのではないでしょうか。行政が弱い者の立場になって、正しい見識を持ち、決断して行政措置をとったことが本当に嬉しく感じました。

 

                               平成27年8月19日 東北工業大学 学長 宮城光信

 

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最終更新日 2017年12月9日