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宮城 全学長通信バックナンバー

第27回:入院して学んだこと

2015.5.20

 今回の学長通信は私の体験から感じ、学んだことを記してみたい。プライベートなことであるが、学生や教職員に私の経験・思いを伝えたく、あえて書くことにした。

 平成26年度学位授与式(3月20日)、そして平成27年度入学式(4月3日)が無事終えたのを待って、ここ数年来懸案であった心臓手術を受けることを決断し、約一か月間、東北大学病院に入院した。朝9時に手術室に入り、後で聞いたところによれば7時間に及ぶ手術だったようである。その間、麻酔で眠っていたのであるが、集中治療室で自分ではっきり目が覚めたと自覚したのは、翌日のお昼頃であった。手を動かしたり、体の向きを変えたり、体を起こしたり、とにかく何をするにも時間がかかる。また、集中治療室での食事をするのに汗だくで、人の活動エネルギーを生み出す食事がこんなにも大変であるのか、ということも感じた。年齢が一挙に20歳以上も加算された感覚であった。

 昼夜関係なく煌々と輝く照明、絶え間なく鳴るブザー、入院患者の急を要する合図なのか、救急車のサイレンのような音がする集中治療室に、4日間居た。看護師さんは、仕事と言えばそうかもしれないが、命を守るために献身的に働いている。医師、看護師さん、という医療従事者にとっては患者の命を守るということが最大の使命であるが、それと同時に、患者側の視点からは、意のままに排便をしたり、ベッドの中でちょっとした体の姿勢を変えたり、のどに詰まる痰をスムースに吐き出したりすることを補助することもQOL(Quality of Life)の観点から極めて大事な要素であることを実感した。

 その中で、私が学んだことは二つある。その一つは看護師さんの教育・訓練が極めてよく行われているということである。看護師さん同士の会話でそのことがよく分かる。全員ベテランばかりではなさそうで、新人と思われる看護師さんもおられたように思うが、先輩の看護師さんに、必要な処置について確認する際に、尋ねる側も応える側も大変丁寧で、答える方も相手を見下したりするような言動は一切なかったように思われる。会話の中に互いを信頼する心を感じることができた。教育に携わる我々も、知識がやや不足気味の学生に接する場合があるが、上からの目線ではなく、謙虚な姿勢で接しなければならないことを感じた。学生への教育だけではなく、我々自身の学びである。

 二つ目は、エンジニアの立場でみた時、現場には患者のQOLを高めるための素材がたくさん埋もれているということである。私は、「現場」を大切にし、技術を通し、どんな小さなことでも人間社会に貢献したいという願いを持っている。今回の体験から、現場を見学すること、患者さんの気持ちを肌で感じ取ることが大切だと実感した。学生の皆さんも技術を身につけたひとりの人間として、医療設備関連を支える技術に携わることもあると思う。そのとき患者さんの立場になってQOLに貢献してもらいたいと思っている。

 余談ではあるが、退院して家でテレビを見ていたら、作家の瀬戸内寂聴さんが病気をして初めて経験したことのなかで、最も大切だと思ったことを番組の最後で話されていた。自分が健康であった時には、病気の人、弱い人への憐みや同情は全く無に等しかったことに気づかされたということである。それは、私が1か月という短い入院生活で経験したことと全く同じことでもあった。

 

                               平成27年5月20日 東北工業大学 学長 宮城光信

 

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最終更新日 2017年12月9日