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宮城 全学長通信バックナンバー

第21回:技術者の役割と市民のためのデザイン

2014.11.20

  仙台市の中心街の八幡町から長町までの間に、広瀬川を横切る10の橋があります。上流から下流に向かって、「牛越橋(うしごえばし)」、「澱橋(よどみばし)」、「仲の瀬橋(なかのせばし)」、「大橋(おおはし)」、「評定河原橋(ひょうじょうかわらばし)」、「霊屋橋(おたまやはし)」、「愛宕大橋(あたごおおはし)」、「愛宕橋(あたごばし)」、「宮沢橋(みやざわはし)」、「広瀬橋(ひろせばし)」です。仙台市中心部から本学キャンパスを訪れる場合、間違いなくこれらいずれかの橋を渡らなければなりません。
 昭和13(1938)年建立の現在の「大橋」(*1)は、かつての仙台城大手門と城下町を結ぶ橋ですし、昭和10(1935)年建立の現在の霊屋橋(*2)は仙台藩主伊達家代々の霊廟・瑞鳳殿のある霊屋下と米ケ袋を結んでいます。
 この2つの橋と他の橋を比べてみると、私には大きな差があるように思われます。それは橋のデザインの問題で、2つの橋には趣きがあります。昭和の初め頃、建立されたことにも興味があります。
 もともと「橋」というのは、人や物が川や谷、海、あるいは道路や線路などの、道路の交差物を乗り越えるためのものです。そのために構造力学、材料力学に基づき強度が保たれるよう設計・建造されなければなりません。橋が橋となるための最低条件です。しかし、上に述べた2つの橋には機能の他に、無駄な装飾があると思われる方もいらっしゃるかと思いますが、私にはその部分にこそ優雅さ、地域性、建造物(モノづくり、まちづくり)の意味合いがあると感じます。
 私がこれまで一番感動して見て、渡った橋は、プラハを流れるモルダウ河に架かる石橋チャールズ・ブリッジ(カレル橋)です。長さ約500m、幅10mの橋の欄干には40~50m毎に聖人の石像が飾られ、観光客で賑わっています。橋の上には自分の描いた絵やちょっとした小間物を売る人、似顔絵を描く人がおり、ストリートオルガンなどの演奏も行われています。歴史を感じさせる美しい橋の形、橋から眺める景色、音、匂いを含め、橋を渡ることの喜びを五感で感じさせてくれます。ですから、観光客も多いのでしょう。  
  橋の建設にあたっては、機能を優先させることは根本です。しかしそれだけではなく、人々の心が安らぐような橋の建立を、と私は思います。最低限での予算ばかりを考えていたのでは人々の心は満たされず、また後世の人々にも何の感動も伝わらないのではないかと思うのです。土木技術者や土木管理者はそのような橋のデザインにも配慮することが必要に思われます。土木技術(シビルエンジニアリング)とは、元々“まちのため、市民のための技術=まちのデザイン”でなければならないと、私は確信しているからです。

 土木技術者、土木管理・設計者の役割について、もう一つ気がついたことがあります。本学長町キャンパスの南側を、仙台市太白区根岸から鹿野に向かう国道286号線は、元々、都から道の奥多賀城へと続く古代の道が時代とともに変化してきた道で、昭和50(1975)年頃まではまだ細い道でした。しかしその数年後には直線に近い現在の太い道ができ、交通の便、特に自動車利用者にとってはこの上なく便利な道になりました。一方、機能性や便利さのあまり、このうえなく大事なものを失ったと私は思います。
 それはこの国道286号線の建設によって、仙台藩主伊達家ゆかりの大年寺(太白区根岸茂ヶ崎)の前にあった門前町が完全に分断されてしまいました。これは、時に流れもヒトの流れもコミュニティーも、文字通り断たれてしまったということです。もし、門前町を大事に考えていた人がいたとすれば(門前町の地名だけは残っているので、実際にはいらっしゃったかもしれません)、素晴らしいコミュニティーが現在まで続いていたのではないかと思います。
 私が考える“道”とは、単にモノやヒトを導くだけではなく、歴史や精神とも繋がっていると考えるからです。コミュニティーを分断しないためには、財政的には負担がありますが、こうした“まちのデザイン”を考えれば、その門前町の部分だけでも道路を地下に潜らせれば良かったのではないかと思います。

 私たちが生活していく上で、便利さ、機能性を追求することは大切なことですが、それと共に心の豊かさ、心の満足感を充足させることが必要です。本学には八木山キャンパスに工学部、長町キャンパスにライフデザイン学部があります。この二つの学部が、まさに架け橋のようにお互いに協力することによって、この便利さと心に豊かさの両方を満足させることができるのではないかと思っています。そして、工学にもデザインにも造詣が深い学生を育てることが出来るようにも思います。

[参考]
仙台市建設局百年の杜推進部 河川課 広瀬川創生室の「広瀬川ホームページ・広瀬川にかかる橋」
http://www.hirosegawa-net.com/photo/photo01.html

*1 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%A9%8B_(%E5%BA%83%E7%80%AC%E5%B7%9D)#mediaviewer/File:Ohhashi_sendai01s3872_cropped.jpg
*2
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%8A%E5%B1%8B%E6%A9%8B#mediaviewer/File:Otamaya-bashi_Bridge.jpg

宮城 光信 前学長 学長通信バックナンバー

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最終更新日 2018年9月13日