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宮城 全学長通信バックナンバー

第20回:学ぶことの意味と楽しさ

2014.10.21

 孔子(BC552-BC479)の「論語」は、有名なフレーズ:『學而時習之。不亦説乎。』から始まります。
まな んで とき これ なら う。 た、 よろこ ばしからずや
 この意味は
 「聖賢の道を学び、あらゆる機会に思索体験をつんで、それを自分の血肉とする。なんと生き甲斐のある生活だろう。」
 です(http://kanbun.info/keibu/rongo0101.html)。

 孔子の言う学ぶことは「聖賢の道」です。本学の皆さんが主に勉学し、学んでいる内容とは異なります。しかし、皆さんが学ぶことはたくさんありますし、その時代時代に即しいろいろなことを学び、あらゆる機会に思索体験を積んで、それを自分の血肉とすることの楽しさ、生き甲斐は今も昔も変わりはありません。学ぶことは楽しいのです。

 米国の実業家で、アップルコンピュータ社の設立者の一人であるSteve Jobsが、2005年に世界的に著名なスタンフォード大学の卒業式に招かれ、“Stay hungry, Stay foolish (貪欲であれ、愚直であれ)で結ぶ有名なスピーチを行いました。大学を卒業していない(中退している)彼が、15分にも満たない短いスピーチの中で、三つの大事なことを早口で述べています(http://sago.livedoor.biz/archives/50251034.html)。一つ目は“Connecting the Dots(点と点を繋ぐ)”、二つ目は“Love and Loss(愛と敗北)”、三つ目は“Death(死)”で、どれも内容深いものですので、ぜひ読んで(聞いて)貰いたいものです。必ずや、本学の皆さんに大きな励ましと勇気を与えるものとなるはずです。
 その中の最初の一つについて、紹介します。

 当時、Steve Jobs が在籍していたリード大学では、米国で最高と言われる文字芸術(calligraphy)の授業を行っていました。また、キャンパスの中のポスター、戸棚のラベルが美しく手書きされていたというのです。Steve Jobsはそこで、フォントの美しさ、文字の組み合わせ、素晴らしい印刷物とは何が素晴らしいのか、その他、科学では捉えられない芸術的な繊細さを学びました。学んでいた当時は、これらのどれも彼の人生で実際に役立つとは思わなかったそうです。ところがその10年後、彼がアップル社最初のパソコン、マッキントッシュを設計しているときに、かつて学んだ「文字芸術」が彼の脳裏に蘇ってきました。こうして、複数のフォントやプロポーショナルフォントを持つマッキントッシュを設計したのです。これはその後のウインドウズなどすべてのパソコンに反映されました。もし、彼が「文字芸術」の授業を受けなかったとしたら、パソコンは現在のように素晴らしいフォントを備えることはなかったでしょう。
 彼は言います。大学在学中に先を見越して点と点を繋ぐことは不可能でした。実際、先を見越して点を繋ぐことなどできません。振り返って繋ぐことしかできないのです。ですから、今、学んでいることが将来何らかの形で点が繋がると信じなければならないと言っているのです。

 私自身も、わずかながらそのような経験があります。私は高等学校在学中、化学は不得意な科目の一つでした。今でも「モル」などという物質量の単位を見たり聞いたりするだけで、もう一度教科書をひも解かなければ分からないほどです。ただ、化学の授業の中で行った(あるいは先生が行ったのかもしれませんが)銀鏡反応の実験で、一瞬に銀膜がガラスの表面形成されたことに感動し、いつまでも私の頭の中に残りました。不思議に、いまだに決して忘れることなくずっと…。
 その後大学の研究者になってから、私は赤外線を導く中空ファイバの研究を行うことになりました。その根幹技術は内径が1mm以下の金属パイプの中に透明な薄い膜を形成するものでしたが、その時は内面のきれいな金属パイプを作りことが最重要課題でした。こうして複雑な工程を経て中空ファイバを製作していくのですが、製作法を単純化したいと考えていたある時、高校で勉強した、ガラス内面に銀膜を形成する銀鏡反応を思い起こしました。ガラスは究極の滑らかさを持っていますので、この面に金属膜を形成させればいいということでした。その時、銀鏡反応のことを思い出し、ついに滑らかな鏡面を持つ金属パイプの作製に成功しました。と同時に、さらに歯科治療用レーザ装置を実現することが出来たのです。 (http://www.morita.com/global/cms/website.php?id=/en/products/9944_ent/laserequipment/newfilename.htm)Steve Jobsの言われた、「Connecting the Dots」です。

 自分の学んでいることはどう世の中に役立つのか、と問われることがあります。それにすぐ応えられなくともいいのではないでしょうか。楽しく学び、一所懸命考える。そしてそれがいつか、『きっとどこかで役に立つ』という信念をもつことが大事なことではないかと思います。
 つまり今は、学んで時に之を習う。亦た、説ばしからずや…

宮城 光信 前学長 学長通信バックナンバー

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最終更新日 2017年12月9日