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宮城 全学長通信バックナンバー

第19回:現場主義の技術者の任務

2014.9.25

 「科学は技術の母」と表現されることがあります。その訳は、工学・技術は科学の知識を利用・応用し、それを人類・福祉に役立てるためだからです。科学がまず基本にあり、その次に工学・技術が生まれてくるという考えです。とはいえ、工学・技術は科学を基にしながらも、これまでは「不可能(と思われていたこと)を可能にする」という大事な役割を担ってきています。

 2003年に打ち上げられた「はやぶさ」は2005年には地球からはるか離れた小惑星イトカワに到達し、サンプルを採取し、7年もの歳月を費やし、2010年に無事地球に戻ってきました。これは、ニュースメディアによって報道されているように、研究者の熱意とそれを支えている高度な技術の力の成果と言えます。得られたサンプルは研究者によって分析され、その成果は、世界的に権威のある学術雑誌の一つである「サイエンス」誌(アメリカ)の選ぶ、2011年科学10大成果の一つになりました。正に技術の積み重ねと高度化が科学を生み出したものです。文化勲章受章者であり、本学の理事長でもある岩崎俊一博士が日頃言われている、「技術は科学の父」であることを示した一例でもあります。科学が技術を生み、技術が科学を生み出しているのです。

 高度化し、複雑化した社会においては技術者・設計者の役割は近年、ますます重要になってきています。私たちが目にする進化した自動車、何百人もの旅行者や何百トンもの貨物を大陸間にわたって輸送する大型航空機、精細・緻密な画像のTV、ノートパソコン、自分のいるどんな場所でも情報を瞬時に得ることのできるスマートフォン、インターネットは全て技術者が考え出したものです。これによって、人間の考え方、社会の仕組みが大きく変化しました。科学・技術の進展は人間社会に大きな貢献をしたことに間違いはありませんし、私たちはそれによって大きな恩恵を受けています。しかし私たちは科学・技術を万能なものと思ってはいけません。真理、自然に対する畏敬の念も持たなければならないのです。私たちが身を持って経験した3.11東日本大震災は正にそのことを私たちに示したものです。

 本学の卒業生は
1)科学・技術を大きく発展させる最前線の研究・開発
2)日々進化する既存の技術を用いての実務的な机上での設計・管理
3)実施設計に基づく現場の監督と業務管理・分析・評価
4)第一線の現場での仕事など
 このいずれかに携わることになるでしょう。どの仕事も重要で、働き甲斐のある仕事です。その中で、私たちの日常生活、現場のことを知ることは最も大事で基本的なことです。
私は特に現場に関わる後者の二つに携わる技術者が心しておかなければならないことを、今回お話ししておきたいと思います。

 技術が高度化した現在では、多くのものがブラックボックスになっています。卒業生の皆さんは、技術の詳細を必ずしも十分には認識していない多くの人に接することになります。結果のみが問われます。その時は正常に動いている機器でも、何ヶ月後、何年後には工事のわずかの不注意、あるいは利益優先の意図的な作業で不具合が生じたり、うまく動作しないこともあります。私は最近、身の回りで次のようなことを経験しました。

1) 穴が二つ空いているのに、一つしか使われていない灯油タンクの支えの部品
2)屋外に置かれているエアコン室外機器で、さびている幾つかのネジ
3)地中に埋め込まれている排水管の強度不足による破損と曲がり部の安易な接続
4)工事後の清掃不十分によるビニール布による不十分な排水
5)建物と平行・垂直ではない室外機
6)だらりと垂れ下がっている電気配線

 これらの原因・不注意は明瞭です。全て、工事する人・技術者が注意し、素人の気持ちを汲み、プロ意識に基づけば解決する問題ばかりです。相手の立場に立って、丁寧な仕事をすることが大切です。素人が気が付かないような利便性、操作性、安全性を付加するのがプロというものでしょう。そのことによって、信頼が得られ、安心して次の仕事を依頼されることができることになります。1)-6)の事項は命に係わることではありませんが、命に係わる課題を扱う技術者・設計者には高度な倫理観が要求されます。

 本学卒業生や教職員も、東北工業大学という名前で信頼が得られている、ということを是非、自覚していただきたいと思います。本学は100%出資の子会社を持っており、東北工業大学以外の現場の仕事もしておりますが、その従業員の皆さんにおいても、です。

宮城 光信 前学長 学長通信バックナンバー

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最終更新日 2018年9月13日